患者のニーズを満たすために
大津市民病院 三豊総合病院
大岩 都・秋山奈保子
病棟運用について
入院の条件は、積極的治療がもはや有効でないと、前主治医、家族、本人が判断し現在何らかの症状で困っている患者を対象としている。多くの患者が入院待ちをしているが、入院前にはカンファレンスで医師より患者紹介があり話し合いの結果、優先順位や入院を決定している。入院中の外出・外泊は患者、家族の希望があれば許可される。外出においては私たちが研修中に体験した例として、毎日妻と外食にでかけていた患者がいた。58歳男性、食道ガン患者であり、間もなく食べられなくなるので、体調の良い現在、美味しい物をたべておこうという患者の思いをかなえていた。また会いたい人に会っておきたいという切なる希望で、遠方へ外出する患者もいた。
外泊は、家族の受入れ(希望)があり、サポートシステム(例えばどの看護婦でも24時間、電話対応できるようプライマリーナースが外泊時の対策を準備しておく)を整えた上での外泊であり、患者家族が安心して外泊できるようにされていた。また、1日1回、外泊先へこちらから電話を入れるなど配慮されていた。面会は24時間可能であり、家と同じで病棟全体が大家族のような雰囲気があった。ペットの面会は外階段を使用して自由であり、排泄のしつけができているペットに関しては同室で過ごすことも許可されている。飲酒・喫煙も自由である。民間療法に関しては、特に副作用がないと思われる物で、本人および家族が使用したいと強く望んでいる民間療法は受け入れている。しかし、内緒にしないで必ず知らせていただくようにしている。
宗教の有無は問わないが、もしあればそれぞれの方の宗教を大切にしている。
患者および家族のための行事、サービスとして季節ごとの行事は主として病棟ボランティアが企画実行されていた。節分、ひな祭り、お花見、花火、お月見、クリスマスなどである。また月1〜2回病棟コンサートやフィーリング・アーツなども行われていた。私たちの研修中には、ある患者のお誕生会が行われた。これは、スタッフ全員の寄せ書き、花束、唄のプレゼントで記念写真を撮っていた。できるだけ多くのスタッフが病室に集まり、心よりお祝いの言葉をかけていた。我々の心にもポッと灯のともる暖かい会だった。このように終末期にある患者が残された日々を家族とともにその人らしく生きられるよう援助されていた。
症状コントロールについて
緩和ケアの目指すものは、末期患者がその人らしく生を全うできるように援助することであり、患者の生命の質(Quality of Life)をできるだけ高めることである。そのためには症状のコントロールおよびケアが重要である。患者の苦痛を身体的、精神的、社会的、霊的の領域から把握し、これらが相互に関連する全人的苦痛Total painとして理解することが重要であり、これらが十分にケアされると患者は自分らしさを取り戻すことができる。
したがって、ターミナルケアにおいては患者がなにを望み、なにを必要としているかを理解することが大切である。
六甲病院においても症状コントロールは医師の重要な役割であり、早期に緩和できるよう最善の努力がされていた。そのためには、薬剤の有効性、副作用の程度など細やかな観察が必要となる。また、看護婦による補助療法はコントロールの効果を高める。専門的知識、技術、を駆使して症状コントロールをはかり、患者の苦痛、不快感を取りのぞくことが大切である。
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