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 受講生の報告からもわかるように、実際に理念に基づいてなされるホスピスケアに接することによる学びは大きかった。

最後に緩和ケアの現場で“どんな看護を提供したいか”ということを念頭に置きながら研修のまとめを作成した。

研修の評価

 緩和ケアに関心のある受講生であることから、受講後に基本的考え方の相違とか修正はほとんど見られなかった。しかし、次のような言葉からもうかがわれるように研修終了後はより考えが深まり、より自分の考えというものを確立させ、自分の課題を明らかにできたのではないかと思われる(「自分はこういう場合はこう考え、こう判断するということが明確になった」「私という価値観で患者さんを見ていたんだ」「今まで迷っていたことに講義や体験学習を通して答えらしきものが見えた」)。

 また「専門的知識・技術を習得し実践能力を高める」に関しては、部分的には実際に行っていること、知っていることもあったと思うがトータル的に学習したことで、実際の場で統合的に知識技術を利用できるのではないかと思われる。研修終了後の受講生の5段階式の自己評価において研修のねらいについて見てみる。

 ねらい、内容についての理解度は“非常に良く理解できた”と“良く理解できた”で占められていた。今後、実践能力を高めるということを課題としてとらえ、実践の中で繰り返すことにより能力を高めていきたいと考えていた。また、研修での体験、理解したことを現場で役立たせることができるかの問いに対しては、皆役立たせることができると感じていた。中でも14名は非常に役立たせることができると感じていた。新たに緩和ケア病棟をたちあげるための任をおってきた人も、自分の中ではその構想が練れてきたようであった。受講生の背景により役立たせられる部分と無理な部分があると感じている受講生も見られた。しかし、全員が自分たちに必要だと感じる部分に関してはこの研修の学びを現場に持ち帰り活用したいと考えていた。

 また、ねらいとしては打ち出してはいなかったが、ネットワークを広げるということがもう1つのねらいであった。これは、受講生たちも徐々に大切さに気付き、この出会いを財産にするという言葉が見られた。

 細かいプログラムに関して言えば、総論から各論の組み立て、科目のバランスは適切であった思うが、ホスピス実習の前に講義は入れてしまう方が良いように思われた。知識を統合して実習の場に臨んだ方がより効果的に実習での気付きが得られるのではないか思われた。少なからぬ受講生が苦手と感じていた腫瘍学、倫理学なども必要性、講師の魅力と講義法で興味深く聴けたとのことであった。体験学習やプレゼンテーションすることで主体的に取り組むことができたと思われる。また、ホスピスでの実習は宿泊場所、距離等の問題はあったが、ホスピスの現状を実感でき、また、他の受講生の行った施設の情報も取れ有効であった。

 また、受講生たちの熱心さは講師の先生たちが口をそろえて指摘された。

 緩和ケアに対する考え方も、ある人たちにとっては“患者や家族が可能な限り人間らしく快適な生活が送れるように援助する”ということは当たり前のことかもしれないが、そうでない人たちもいる。知識・技術に関しても能力が低いためにしなくても良い苦痛を与えているかもしれない。特定の施設に行った人だけが人間らしいケアを受けられるというのではなく、どこに行っても人間らしいケアが受けられるようであったらと思う。個人個人が力をつけることはもちろん必要ではある。それと同時にネットワーク網を密にして有用な知識の共有ということもはかれたらと思う。インターネットもその手段として考えに入れたらいいのではないかと思う。緩和ケアでは特にいろいろな専門分野の人たちが協力しあってケアを行う。

 

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