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講師の“日本のがんは痛い”という言葉が強く心に響いたようであった。疼痛コントロールはナースの担う部分が大きく、ナースの疼痛コントロールに対する知識、アセスメント不足が疼痛コントロールに影響するとナースの責任を自覚していた者もあった。ターミナルのリハビリテーションに関しては、キーワードは全人間的復権、QOL、廃用症候群、できるADL、しているADLととらえていた。リハビリテーションの理念を知ることによりリハビリテーションがQOLの向上に結びつくことに気付き、同時にチームアプローチの必要性も感じ取っていた。消化器症状に関しては、キーワードは嘔気、嘔吐、消化管閉塞、便秘、口腔内ケアととらえていた。食のニードの重要性、看護として工夫されるべきことがまだまだたくさんあると感じ取っていた。

 症状コントロールの精神変調、全身倦怠感、死前喘鳴、不安、せん妄、セデーションに関しては講義前にグループワークを行い発表原稿を作成した。それぞれ分担個所のプレゼンテーションを行い、講師の総評を受けた。自分たちが発表を行うことでより知識も深まりより積極的に授業に関わることができたようであった。

 コミュニケーション論に関しては、効果的コミュニケーション、自己受容、他者受容をキーワードとし、相手の「キュー」を見逃さない観察力と感性が必要ということであった。コミュニケーション論の実際としてロールプレイ、SP(模擬患者)を行ったが傾聴、共感、対応、沈黙などの難しさを身を持って感じていた。

 社会資源の活用に関しては「何が患者さんに必要な社会資源であるかをわかる」知識が必要である。利用できる社会資源を見つけることが患者さんのQOLを高めることにつながる。(MSWと協力して)

 学習目標の3として、「家族や患者の心理を理解し、心のケアの知識・技術を習得する」に関して“進行がん患者の心理的特徴と援助”“がん患者家族へのケア”の講義がなされた。キーワードとしては、危機理論,危機モデル、コーピング理論があげられた。理論を使うことでその人の足りない部分が明らかになり、またどの過程で苦しんでいるかがわかり適切な介入ができるのではということであった。また、事例をグループで危機モデルにより分析するという課題が講師より出された。AguileaとMessickの危機モデル、FINKの危機理論を使い事例を分析しグループごとの発表を行った。理論を使うことの難しさ、モデルに使われないようにという学びにつながった。また、心理的特徴と援助のスピリチュアルペインに関してはキーワードを生きる意味への問い、罪責感、生かされる援助ととらえていた。ナースは最後の癒しの器となる可能性がある。そのことが医療者の使命であるという言葉を心に受け止めた人は多かったようだ。

 家族援助ということではまず家族の理解というところから入った。家族もまた患者と同様にケアを必要としている存在であるということ。また、患者がどのような終末期を迎えたかが死別後の家族の適応に影響するということに気づかされた。家族が患者の死後適応していけるように患者の入院中から関わっていくことの大切さがわかった。キーワードは家族システム、ストレス−コーピング、危機理論、Life Transitionsととらえていた。

 学習目標4の「チーム医療の理念を理解し、チームアプローチが実践できる」に関してのキーワードは、目標、役割、死生観であった。チームアプローチはチームの目標を皆が理解し目標達成のために自分の役割を自覚し実行することが必要である。チームの構成員はそれぞれの役割を尊重し、対等な立場で意見交換し緩和ケアの理念を共有しなければならない。緩和ケアで働くには個人の死生観をしっかり持たなければならない。死ということ、自分の死生観を問い直した。死という重いテーマで苦しくはあったが、体験学習で楽しく学べた。

 これらの学習を統合して実践の場で生かすにはどうしたら良いか。実際を知るためにホスピス病棟での実習を行った。

 

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