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6. 柔軟な経営体制の確立

 

(1)多角化

経営の多角化は、造船・舶用業界において、古くて新しいテーマである。

業界全体としては、必ずしも成功を収めていないが、今後各社の体力と規模に応じて、多角化に取り組んでいくことも必要となろう。

その場合、他業界との情報交流や公的試験研究機関の利用等により、自社に適した事業分野の見極めが必要である。

 

(2)為替リスクヘッジ

【大手・中手】

為替変動リスクにさらされ、収益が確定しないのが、外航船造船所の大きな悩みであった。各社では、円建て契約とする等の対応を図って来た。

舶用部品においては、船主から欧州企業製品を搭載するよう指定されることも多く、為替リスクは外航造船所のみの問題ではない。(この場合、円高がメリットになる)

今後においては、以下の対応が考えられる。

●海外調達の検討

現在の段階では、海外との製品の品質差、納期に対する不安があり、海外調達は普及していない。しかし、加工程度の低いものから次第に、外国製品も採用されつつある。わが国企業による技術指導も行われ、今後においては、海外調達の検討も考慮に入れる必要がある。

●ドルコスト化

外航海運業においてはドルコスト化(支払い通貨を米ドルにて行うこと)を進めてきた。

造船業においては、大半が国内調達であるために、適用の範囲は少ないが、ドル建契約の船の場合には、ドルコスト化も考慮の対照となろう。

外国為替管理法が改正され、平成10年4月から、国内での外貨利用が可能となるので、条件的にも整備されつつある。

●海外進出

長期的に考えると、海外進出等も一つの方策である。輸出産業でありながら、造船業が国内に残ったのは、作業工程が複雑であり、熟練した技能工の「技」に依拠する部分が大きかったためにほかならない。このため、困難さはつきまとうが、現地工場を持つことだけでなく、提携、技術協力等も選択肢の一つとなろう。

海外との提携も10年のスパンで考えると、視野に入れておく必要があろう。

 

 

 

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