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《今後の環境》

●大型遠洋船

韓国等の設備拡張により、国際的な需給能力のギャップが拡大しつつある。この3年程度は活況が続くものとみられるが、2005年以降大型タンカーの需要が一段落すると、激しい受注競争により、船価の低迷が予想される。

●遠洋船・近海船

アジア地域を結ぶ航路に用いられる近海船は、アジア経済の行方に左右される。この2年程度は回復が望み薄であり、ここ数年活況を呈して来た近海船市場は悪化が懸念される。

国際競争は大手造船所を中心に、おおよそ5万トン以上の船舶を舞台に繰り広げられることとなろうが、5万トン未満の造船所も無縁ではない。国際競争の激化から、大手や中手が近海船や大型内航船へ、近海船を建造していた造船所が内航船へと、その領域(船型)を下方に伸ばしていくことが考えられる。

●内航船

輸送構造改革から需要量そのものが減っており、今後5〜10年程度は回復が望めない。

加えて、遠洋・近海マーケットの需給が悪化してくると、中型造船所が、内航船の営業を強化することが予想される。

モーダルシフトも当面、目に見えては現れにくい。

 

b)規制緩和

競争条件の整備のための規制緩和が次第に進んでいる。需給調整そのものを段階的に解消していこうとする方向にある。

そのため、事業拡大意欲、投資余力のある造船所にとっては、好機でもある。

従来の、枠組みが崩れていくことが予想される。

 

(2)経営資源の状況からみた今後の姿

a)四国の優位性

四国の強みは今後とも続くものとみた。

そのため、今後の建造量見通しにおいても、むしろわが国全体に占めるシェアの向上を予定している。

b)生産体制に問題

むしろ、獲得した受注を円滑に消化できるかが問題となりそうである。生産性が維持・向上できるか、特に設備面と労務面で問題となる。

生き残り競争の中で、造船所の経営格差、特に設備投資余力は一層拡大していく状況が予想される。大手、中手、中型、小型の間で研究開発投資力、設備投資余力で開きが広がりつつあり、小型造船所において技術力の向上が難しい。

そして、最大の問題点は労働力の確保であろう。

c)業界の構造の変化

従来は、船のサイズ別に明瞭な「すみわけ」があった。しかしながら、規制緩和とともに、そうした構図が次第に崩れていく。

中型以上の造船所においては、従来通りの自助努力による事業継続が可能であろうが、小型造船所においては、自助努力に加えて、自らの選択により事業領域を更えていく(廃業も含む)必要に迫られている。結果として、グループ化が一段と進展していくものとみられる。

 

 

 

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