日本財団 図書館


限定されていたことも大きな隠れた要因であった。今後、瀬戸内島しょ部など、道路・橋梁をはじめとした交通が整備されていくに連れて、労働力移動の範囲は広がる。このため、労働力がより賃金の高い地域に吸い寄せられ、集まりにくい状況が加速していくことも想定しておく必要がある。

 

(2)造船業の相対的魅力の低下

a)現場離れ

産業構造が、第一次産業から第二次産業へ、それからさらに第三次産業へと産業の中心が移りつつある。製造業で人員の絞り込みが断続的に行われたため、労働力の吸収は専ら建設業とサービス業が受け皿となってきた。製造業離れ、現場離れの傾向が顕著になってきており、人材不足は現場作業に共通の悩みとなっている。舶用事業所においても、屋内作業においては新規採用者の定着率もまずまずであるものの、現場作業・屋外作業において定着率に悩んでいる等の報告が行われている。

造船業においては、作業特性から機械化が遅れ、屋外作業も今なお多い。このため、新規労働力の供給自体が細ってくるなか、限られた新規労働力獲得をめぐっても、造船業・関連工業は製造業の中でも不利な条件と言わざるを得ない。船価が厳しく、賃金や労働条件を抜本的に改善することが難しいだけになおさらである。

b)技術進歩

CIM(コンピュータを用いた統合生産システム)やCAD/CAM・技術計算などハイテク(高度技術)の要素は造船業にもあるものの、そうした技術革新が地域社会になかなか表立って見えにくく伝わっていない。産業のイメージや就職の場としての魅力が改善されておらず、新規就労者の増加につながりにくい。

(3)高齢化

高年齢化の著しい造船業界においては、高齢者対策は喫緊の課題と考えられるが、現在の状況では入職者が非常に少なく、退職者の補充が進まない懸念がある。最悪、この10年間で従業者は半減するのではないかとの厳しい見通しすらある。仮に、人員は足りても、技能を一朝一夕にマスターすることは難しく、機械化対応の取り組みが併せて必要となろう。

(4)時短

「ゆとり」を求める社会情勢の変化から、週40時間労働制など労働面についても、さまざまな措置が施されている。

造船所においては、4週6休制と年次休暇の組み合わせにより総労働時間を年間計で週40時間になるように設定している所が多い。

現実には、外航船の建造が好調なため、従来通り土曜日や祭日も出勤しているケースが多い。それらはほとんどが時間外対応となっており、コストアップにもつながっている。しかし、新

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION