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c)公共事業抑制

政府の財政事情の悪化から、公共事業費の削減が決定(平成10年度7%、11年度以降も含め15%削減)された。民間部門のビル・マンション等においては冷え込みが続いており、公共部門は建設業界にとって下支え効果を持っていた。しかしながら、民間部門の回復がないまま公共部門が削減されることによって、建設業界には危機感が漂っており、既に鋼材、セメント等の関連資材の荷動きに影響している。

d)物流合理化への内航海運業の影響

これまで、内航海運業界においては事業者間の共同化や提携は見られなかった。これは、特定荷主の貨物輸送に依存した形態が主流であり、荷主と船社の系列が強固であったためである。しかし、輸送需要の伸びが期待できない中、効率化をあくまでも進める大手荷主は系列オペレータの選別・絞り込みを進め、系列関係が変化することが想定される。

これまでは、どちらかと言えば荷主からの合理化要請に応じる形であった。しかしながら今後は、オペレータとしては、効率化や集荷力の強化を進めることが必要になり、対応策として、船舶の共同運航によるコスト削減や空きスペースの融通や集荷貨物を相互に交換し稼働率を上げるなど、事業者間の共同化.提携の動きが始まるものとみられる。

 

(2)船腹量需給調整の廃止

a)内航船腹調整制度の見直し

昭和41年に始まり、長らく内航海運業界において機能してきた船腹調整制度は廃止も含めた検討が行われている。船腹調整制度は、新船建造船に際し一定比率の既存船の解撤を義務づけるスクラップアンドビルド方式と言われているものであり、例えば一般貨物船の場合は新たに建造する船舶の1.2倍(重量トン)のスクラップが義務付けられている。

このように新船建造に際して、所有船のみでは不足する分を購入する必要から生じたのがスクラップ権である。需給関係により権利相場が形成され、事実上、無形財産化していた。

b)権利相場の下落

船腹調整制度が廃止された場合、中小海運業者、特に船舶貸渡事業者に最も大きな影響を与えるのは、いわゆる引当権利の消滅である。権利相場は、景気後退に加え制度廃止によるスクラップ権消滅の懸念も加わり、貨物船で90〜95千円/D/W、油送船で25〜30千円/D/Wとなり、

 

 

 

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