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(4)国際的な安全基準の強化

a)国際協調の進展

国際海事機関(IMO)では、サブスタンダード船排除と寄港国による外国船籍の検査の監督(ポートステートコントロール=PSC)強化の問題、海洋環境保全とTBT塗料問題、船舶安全性確保など世界的規模での重要課題が議論されている。1998年(平成10年)7月からは一部船種について国際安全管理コード(ISMコード)の適用が強制適用されることとなっている。各国でのPSCの強化により、老齢船を中心としたサブスタンダード船の排除が促進され、海運市場の受給バランスが改善されることが期待されている。

造船海運大国・日本が積極的にリードして過当競争から脱却すべきとの指摘も多い。わが国造船業としては、諸課題について、技術的側面を中心にあるべき姿を提言して、世界の造船、海運業をリードしていく必要がある。

b)ダブルハル化によるVLCC需要の発生

1992年(平成4年)の国際海事機関(IMO)において1995年(平成7年)7月以降は、原則として船齢25年以上の船舶に対して船体の二重構造化が義務づけられた。

既存船舶の二重構造への改造には膨大なコストを要するところから、規制対象となる船舶の大半は解撤に回るものと予想される。このため、1975年(昭和50年)以降に多量に建造されたVLCCクラスの大型船舶が使用期限を迎える2000年前後には多量の需要が発生するものと期待され、97年後半から大手造船所においては既に受注を確保しつつある。反面、2000年を過ぎると大きくピークアウトする懸念がある。

実際の建造は大規模ドックにて行われるが、造船マーケットや関連機器需要を活性化させるものと期待される。(四国においてVLCCが建造可能なドックは1本のみ)

 

(5)環境保全のための国際的な枠組みづくり

最近タンカーからの油流出事故が相次ぎ、船体構造のみならず、流出油回収等のミチゲーション(環境修復)技術についても社会的関心が高まっている。わが国は船舶・海洋技術力を駆使して、環境問題等の社会的ニーズに率先して取り組む責務がある。1997年(平成9年)12月に開催された地球温暖化防止京都会議にて採択された議定書によると、温室効果ガス排出削減率は2008年から2012年までに90年比で日本が6%、米国7%、欧州連合(EU)8%、先進国全体で5.2%と歴史的な合意に達した。数値目標が示されたことで物流効率化によるCO2削減の取り組みが求められている。船舶においても、主機関からの二酸化炭素の排出量の削減、海洋エネルギー開発、省エネ技術の開発、国内においてはモーダルシフトの推進等が求められよう。

これらの問題について造船・海運大国でかつ、環境対策先進国として、わが国から積極的に発言していく必要があろう。

 

 

 

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