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(3)東アジア経済の成長による輸送需要の増加

a)経済成長と輸送需要

1990年代に入ってからも、アジア諸国の高い成長に伴い、アジア諸国における貿易は拡大を続けた。東アジア諸国の貿易総額の伸びは93年から96年にかけて1.51倍に伸びており、日本1.25倍、米国1.35倍、EU1.41倍に比べると大きい。

この背景の一つには、1985年以降の円高やアジア諸国の持つ安価な労働力、投資促進政策といった好条件の下で、製造業をはじめとする日系企業等の直接投資が増加したことが挙げられる。こうした直接投資の増加により、企業拠点間の貿易という形での国際的分業が成立し、わが国を含めたアジア地域内での工業製品・部品等の貿易が増大するとともに、生産能力の高まりから対米、対欧製品輸出入も拡大している。

アジア各国間での海上荷動きも増大した。特に、日本とアジア諸国の主要貿易品目である自動車部品、電気製品、食料品、繊維製品、雑貨等の輸送が大きく発展している。

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b)最近の状況

1997年(平成9年)後半から東南アジア経済の混乱による各種インフラ整備プロジェクトの見直しなどから、東南アジア向けの建設機械やプラント、セメント、南洋材等の荷動きが減少している。近海船市況も下落している。

こうした荷動きの停滞に加えて、新造船の供給圧力も市況低下の大きな要因となっている。近海船は、老朽船のリプレース需要や東南アジア地域の荷動きの増加を見込んで新造船発注が95年後半から活発化、97年に入り竣工が相次いでいる。これが船腹需給軟化のもう一つの要因となっている。

需給両面とも、当面急速な回復が期待できる好材料は見当たらず、先行きに注視が必要である。

 

 

 

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