第4章 四国地区造船業・舶用工業を取り巻く環境
造船業・舶用工業は、受注産業である性格上、需要の変化は避けて通れない。前回のビジョン以降、需要構造をはじめとして環境が大きく変わっている。
今後の海外市場は、韓国に加え中国の成長が予想され、国際市場での競争激化が予想される。そうした中、造船・海運大国であるわが国が、船舶の安全性等でリードしていくことが期待されている。
国内海上輸送構造の変革が進みつつあり、内航海運はその影響を強く受けている。
需給調整のための規制緩和が次第に進み、今後数年間その傾向が続いて、内航船舶需要は質・量ともに変動が予想される。
労働力の安定確保は生産現場における重要な課題であるが、従業者の年齢構成は歪んでおり、高齢者・女性など新たな労働力にも目が向けられつつある。情報化・ハイテク化を活用することにより、部門の壁を超えた生産性の向上の可能性が芽生えつつある。
1. 海外情勢
(1)為替
a)円高の進行
船舶は「国際単一商品」であり、受注・建造期間が長期にわたることから為替レート変動の影響は大きい。
「前回ビジョン」を策定した昭和57年の円ドルレートが1米ドル249.26円に対し、平成10年1月現在、120円台後半と、52%も円高が進展している。平成7年(1995年)初めに一時1ドル80円台を付けたこともあった。平成8年、9年は円高修正が行われており、1ドル100〜110円を前提としたコストからすると、一息ついている。
四国の造船は、輸出の割合が98.7%(平成8年度、許可船の総トン数ベース)と高く、為替変動には多大の影響を受ける。このため、ドル建と円建の使い分けなど対応を図っているが、コストダウンの徹底と、設備・工程の改善による生産性の一段の向上が求められる。
一方、外国、特に欧州の舶用メーカーに依存している機器もあり、為替変動による価格上昇の影響が報告されている。