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6. 技術・生産管理

 

(1)設計

今後、船主・オペレータの求める船舶を造っていくためには、設計力がキーポイントである。中型以上のクラスの造船所では、設計部門に10人単位で充てており、コンピュータ化も進んでいる。一方、小型内航船専門の造船所では、1〜3人程度である。

仕事量が多い時や社内では技術レベルが対応できない場合には、外注をも活用している。造船所の集積している地域においては、設計会社もあり利用している。一方、単独立地に近い造船所においては、自社内にスタッフを確保したり、親密な外注先を持つ等の対応を図っている。

 

(2)資材調達

グループを形成している造船所においては中核企業で一括して資材を調達する等して、コストダウンを図っている。小さい造船所においては信用力も乏しく、資材の面でもグループ化の効果が高い。

船舶用厚鋼板はサイズ、厚さ等細かい指定があり、汎用品ではないので、品質の面からも輸入鋼材は使用しにくい。部材においては、込み入った加工を必要としないものについて、一部東南アジア製品が入ってきている。わが国メーカーの現地工場で加工された部材も入ってきている。

機器類については、船主がメーカー・型式を指定することが多く、造船所としては仕入価格引き下げを図りにくい。機器によっては、事実上1社独占といった製品もあり、その場合には価格交渉の余地なしといった状況も見受けられる。平成9年の円安により、輸入資材価格の上昇もみられる。

 

(3)工程管理

a)工程の工夫

製造工程における工夫の余地は多いに残っている。それにより、工数が減ったり、一工数当たりの所要時間の削減、資材ロスの削減などに効果がある。

外注先の創意工夫により、ちょっとしたことでも建造期間短縮、コストダウンに繋がることがある。受注先にとってもより短い期間で加工できれば、それだけ手取り収入が増えるので、改善のインセンティブにもつながる。関連産業が集積している地区では、そうした「改善」が造船所間を渡り歩いている業者によって、もたらされるメリットもある。造船所は屋外作業も多く、隣り合っている造船所間では、そうした工夫・改善もすみやかに取り入れることが可能である。

b)工期の短縮

船価が低迷しているために、ブロック外注等を活用し、船台に載っている期間を極力圧縮し、年間に建造する隻数をこなし、売上げを確保しようとする傾向が顕著になっている。

一方、1000総トン未満の内航船に特化している造船所の場合は、建造能力に限りがあることから、内航海運総連合会の建造申請にベースを合わせて1隻ずつコンスタントに受注を取っていき、年間3〜3.5隻建造している。

c)人の移動による技術レベルアップ

自前で技術者、技能労働者を養成しにくい小造船所の場合、大手・中手の造船離職者を受け入れることによって、レベルアップが図られた面もある。過去の造船不況の時の大手・中手造船所の人員整理により離職した技能工が小型造船所に就職しているケースもあり、こうした人材の流動化が技術の移転に寄与している。

 

 

 

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