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中クラス以上の造船所では、建造できる船種を増やしていこうとする気持ちが強い。プロダクトミックスという考え方である。そのためには、設計部門を充実させる必要があり、設計部門に新卒者を毎年投入したり、コンピュータ投資にも積極的に取り組んでいる。特定の船種に依存していないため、不況期には強い存在である。新しい高付加価値船に取り組んでいくことによって技術力が蓄積したり、それを対外的にアピールできる効果もある。

中型でもケミカルタンカー、冷凍船などに強みを有する造船所がある。小型造船所においては主力を499型貨物船において、その他の船種にも取り組むものと、そうでないものとがある。

慣れないタイプの船を扱うと、工程がスムーズに流れず、設計の見直し等、建て直しに苦労するケースもある。一方、扱い船種を絞り込むと、?@他船種の設計や技術能力の向上・蓄積が難しい、?Aある船種の船腹量が過剰になり建造需要が減退すると直接その影響を受ける、?B受注の確保がスムーズにいかず遊休(アイドル)が生じる懸念がある、などのデメリットがある。

b)標準船への取り組み

内航船を主に建造・修繕している中小造船所が今後も生き残っていくためには、同一船型・同一仕様による一括ないし連続建造以外にない、と以前から指摘されてきた。かつて標準船の建造に乗り出した造船所もあったが、船価の低下を招いたこともある。オーダーメイドの船では満足せず、内装に凝り特別注文の多い内航船主の気質から、標準船が普及しなかったのが実情である。

 

(5)船価

外航船においては、韓国における建造設備の増強による生産能力の増大から、需要が堅調であるにもかかわらず、船価は低迷したままという状態が続いている。2005年以降は世界全体の受注量が減少に向かうとみられる中、少ない引き合いをめぐっての極めて厳しい価格競争が展開されるものと予想される。

内航船は、平成4年をピークに船価が下がり続け、平成9年に入りようやく下げ止まったものの、低位横ばいで推移している。船価を改善しようという動きも出てきたものの、用船料との兼ね合いで難しい状況である。

 

 

 

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