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所有者が船舶法第1条に掲げる者たることをもって足りるが、かかる船舶は、船籍票の交付を受けなければ、未だ完全に日本船舶としての権利を行使し得ないことは船舶国籍証書の場合と同様である。

(1) 船籍票の受有は、船舶の航行の条件である。すなわち、総トン数20トン未満であって、総トン数5トン以上の船舶は、漁船を除き、船舶所有者が船籍票の交付を受けなければ、これを航行させることを得ない(船籍政令1条)。この違反に対しては、船舶所有者は、2千円(現行においては2万円)以下の罰金に処せられる(船籍政令11条)。ただし、一定の場合には、船籍票を受有せずして当該船舶を臨時に航行させることができる(船籍政令8条の4)

(2) 漁船については、船籍票の交付を受けることを要しない。すなわち、漁船法第20条において、船舶法第21条の規定に基づく命令は、船舶の総トン数の測度及び船名の標示に関する規定を除き、これを適用しないものとし、これに基づき、船籍政令第1条は、船籍票を受有すべき船舶のうち、漁船を除外するものと規定する。船舶国籍証書を受有すべき総トン数20トン以上の船舶については、かかる例外は存しない。ここに漁船とは、漁船法第2条第1項に掲げる日本船舶、すなわち、?もっぱら漁業に従事する船舶、?漁業に従事する船舶で漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの、?もっぱら漁場から漁獲物又はその製品を運搬する船舶、?もっぱら漁場に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁場の取締に従事する船舶であって漁ろう設備を有するものをいうのである(船籍政令1条)。かかる例外規定を設ける趣旨は、日本船舶たる漁船は、必ず漁船原簿に登録をなし、登録票の交付を受けるものであり、しかもその事務は、船籍票の交付事務の場合と同様に、都道府県知事が管掌するものであり(漁船法9条、11条参照)、さらに総トン数20トン未満の漁船は、その国籍につき国際的関係を生ずることも稀であるから、その手続の簡素化を図ることにあるのであろう。すなわち、漁船については、漁船登録票をもって船籍票の役割をもかねさせているのである。

漁船は、漁閑期を利用して、貨物輸送に従事しようとすることがあるが、かかる場合にその所有者は、漁船登録票の交付を受けたまま、船籍票の交付を受けないで、当該船舶を貨物輸送に従事せしめうるか否かの問題がある。総トン数5トン以上20トン未満の漁船が漁船法の適用を受けない船舶となった場合には、当然船籍票の交付を受けることを要するが、当該漁船は、漁船法の適用を受けるものである限り、すなわち、たとえ一時的に貨物輸送に従事しても、なお漁船登録票の受有が適法なものである場合には、漁船登録票のみにて航行しうべく、また船籍票の交付はなし得ないものと解する。これは、漁船法第20条は、漁船については船籍票に関する規定の適用を排除するからである。したがってこの問題の解決は、漁船法自体において、第2条第1項に掲げる漁船は、一時的に貨物輸送に従事する場合があっても、なお漁船登録制度の適用を受くべきものと解するか否かにかかっている。そして、同法第2条第1項各号において「もっぱら…」と規定する意味は、文理的には各号に掲げる目的以外の航行には使用しない船舶と解しうるが、漁船法の運用

 

 

 

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