日までに船舶国籍証書を提出しないときは、船舶国籍証書はその効力を失うものとされ、この場合において、当該船舶の船籍港を管轄する管海官庁は、船舶原簿につき職権をもって抹消の登録をなすことを要するものとされる(法5条ノ2・4項)。したがって、期日までに検認を受けなかった場合には、当該船舶は未だ船舶国籍証書の交付を受けていない状態になり、また未だ船舶原簿に登録されていないものとなるのであるから、船舶法第5条の規定により新規登録をなすことを要し、また船舶国籍証書の新規交付を受けた後でなければ、日本の国旗を掲揚し、当該船舶を航行させることができないのである(法6条参照)。
第2節 仮船舶国籍証書
第1款 総説
1. 仮船舶国籍証書の意義
仮船舶国籍証書とは、船舶が日本国籍を有すること及び当該船舶の同一性を一時的に証明する公文書である(細則第4号書式)。一時的に証明するものである点、すなわち、有効期間がある点において、船舶国籍証書と異なり、また船舶国籍証書の交付、書換又は再交付を受くべき船舶に対して、特定の場合に交付されるものである点に特質がある。仮船舶国籍証書の交付を受けることによる効果としては、船舶国籍証書と同様に、前記の日本国籍及び当該船舶の同一性の識別についての公証のほか、当該船舶の日本国旗の掲揚及び航行(商行為等もなしうる)の権利の発生がある(法6条)。
2. 仮船舶国籍証書の交付を受けるための条件
仮船舶国籍証書は、日本船舶であれば如何なる船舶もこれを受有しうるのではなく、一定の制約がある。すなわち、仮船舶国籍証書の交付を受けるための要件は次のとおりである。
(1) 総トン数20トン以上の日本船舶であることを要する。すなわち、日本船舶であっても、船舶法第20条に掲げる船舶については、交付されない。
(2) (1)の船舶であり、さらに次の各号の何れかに該当する場合であることを要する。
(ア) 船舶を取得した地が、当該船舶の船籍港を管轄する管海官庁の管轄区域外である場合(法15条、16条1項)
船舶を取得した地が当該船舶の船籍港を管轄する管海官庁の管轄区域外である場合には、登記及び登録の手続をなし、船舶国籍証書の交付を受けるまでには相当日数を要することがある。したがって、船舶所有者が取得後直ちに船舶を本来の航行の用に供しようとする場合において、船舶国籍証書の交付を受けた後でなければ航行し得ないものとするときは、船舶所有者の運航計画に支障を来すことになる。ゆえに、かかる場合の船舶所有者の便宜を図るため、仮船舶国籍証書交付の制度が設けられている。