ここに船舶を取得した地とは、日本国内であるか、又は外国であるかを問わない(法15条、16条)。船舶の取得は、その取得の態様の如何を問わないが(新船建造あるいは単なる譲渡による取得等)、未だ登記及び登録を受けていない船舶に限られる(注1)。したがって、船舶国籍証書の交付を受けている船舶を取得した場合には、(イ)の場合を除き、仮船舶国籍証書の交付を受けることはできないものと解する。また、仮船舶国籍証書は、船舶国籍証書の交付を受くべき船舶に対して交付されるものであるから(注2)、外国の国籍を取得する目的をもって日本国内において建造した船舶(いわゆる輸出船舶)については、当該注文者に船舶を引渡すまでの間、一時的に所有権を有する造船者が船舶法第1条に掲げる者に該当する場合であっても、仮船舶国籍証書は交付されないものと解する(注3)。
(イ) 船舶が外国の港に碇泊する間又は外国に航行する途中において、船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書が滅失若しくは損傷し、又はこれに記載した事項に変更を生じた場合(法13条1項、2項、19条)
本号に掲げる場合は、(ア)と異なり、船舶がすでに船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書の交付を受けている場合であって、船舶が国外に在ることを要する。すなわち、船舶国籍証書は、船内備付の書類として、国際航海に従事する場合に特に重要なものであるから、かかる事態が生じたときは、直ちに船舶国籍証書の再交付又は書換を受けるべきであるが、国外にあるため相当の日数を要するので、一時的に仮船舶国籍証書を交付することにより船舶の運航に支障なからしめようとするものである。また、仮船舶国籍証書につきかかる事態が生じた場合にも、速かに再交付又は書換をなす趣旨である。
(注1) 登記及び登録を受け、船舶国籍証書を受有する船舶を日本国内において取得した者は、船舶法第6条ノ2の規定により船舶国籍証書の書換(前提として登記及び登録の変更手続を必要とする。)をなした後でなければ航行させ得ない。また外国において前記の船舶を取得した者は、船舶法第6条ノ2又は第13条の規定により船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書の交付を受けて航行させるべきものと解する。
(注2) スクラップにするため輸入する船舶を外国より日本に回航する場合には、その後において船舶国籍証書の交付を受ける船舶ではないが、なお船舶法第16条の規定に該当するものと解すべきである。
(注3) すなわち、船舶の引渡を外国船主の希望する外国の地で行う造船契約に基づき、その地まで日本船舶として航行させようとする場合についても、その国籍を証明する書類の交付に関する特則は存しない。したがって現行法上は、造船者が船舶国籍証書の交付を受けるか、又は契約を改訂して、日本国内において所有権を移転し、当該国の国籍を証明する書類を得て航行せしめる以外に方法はない。
3. 仮船舶国籍証書の有効期間
仮船舶国籍証書の交付に際しては、その証書の性質上、有効期間を必ず附すべきものとされる。その期間は、外国において交付する証書にあっては1年以内、日本において交付するものにあっては6月以内で定められるが、やむを得ない事由がある場合には、仮船舶国籍証書の交付を受けうる要件を備える限り、さらに船長は、仮船舶国籍証書の交付を受けることができる(法17条)。ただし、船舶が船籍港に到着した場合には、仮船舶国籍証書の有効期間が満了する