をなす場合のごときは登録制度を適用する実益がないからである。
(ア) 造船者 造船者が船舶建造契約に基づき船舶を建造した場合に、その発注者に船舶を引渡すまでの間は造船者に所有権が存するときであっても、その造船者は、船舶法施行細則第4条の規定に基づき船舶を航行させる場合である限り船舶所有者として登録をなさずとも足りるのであり、したがって、その船舶の引渡を受けた日本船舶の所有者(発注者)が新規登録をなすことができるのである。
(イ) 船舶注文者 通常の形態においては、船舶建造の注文者が船舶を本来の用に供するのであり、登録義務者となる。しかし、注文者は、第三者に譲渡する目的をもって注文する場合があり、この場合の注文者は船舶を航行させないのであるから、譲渡を受けた第三者が新規登録を直接なしうるものと解する。
(2) 船舶が登録せられた後において、当該船舶の所有権が移転した場合には、日本船舶の新所有者が所有者の変更の登録をなすことを要する。この場合、登録をなすべき新所有者は、登録の前提としてなされた所有権移転の登記の登記権利者たることを要する(細則25条1項参照)。
第5款 船舶の登録手続開始の態様
1. 登録手続は、原則として船舶所有者の申請(注)によってのみ開始される。しかし、申請は、任意ではなく、強制されているのである。
2. 例外として、申請がない場合にも、登録手続は開始されることがある。すなわち、管海官庁が職権によりなす場合として、
? 抹消登録に関する特則(法14条2項、5条ノ2・4項)、
? 船籍港の転属及び行政区画、その名称若しくは地番号又は字若しくはその名称(細則21条、26条、手続27条ノ2)、
? 管海官庁において、登録に錯誤又は遺漏があることを発見したときの登録訂正(細則47条ノ2・2項)
がある。
(注) 船舶法においては、官庁又は公署による場合と、私人による場合とを問わず、申請とし、登記のように、嘱託と申請の区別を設けない。