由が発生した場合には、前記要件を備えるものとして、登記の抹消はなされるのである(注1)(昭和32年5月9日船舶局長通達舶登531号)。
なお、3ヵ月間存否不明のため登記の抹消をなした船舶が存在することが明らかになった場合の登記については、登録抹消船再用として、当該船舶の所有権保存の登記を申請しうることは当然であるが、別の方法として、その所有者の申請により、抹消された船舶の登記の回復をなすこともできるものと解されている(船登規則1条、不登法67条、68条、昭和25年2月27日民事局長通達民事甲561号)。
(3) 船舶の登記の抹消の嘱託主義
船舶が(2)の要件を備えるときは、その船舶に関する登記は必ず抹消されなければならないが、その手続は、船舶の抹消登録をなした管海官庁がその船舶の管轄登記所に対して遅滞なく嘱託することにより実行されるのである(船登規則30条1項)。したがって、船舶所有者は抹消の登録の申請をなすのみで足り、船舶の登記の抹消を申請する必要はない(注2)。
なお、登記の抹消がなされた後において、当該登記が管海官庁の過誤により、不適法に抹消されたことが判明した場合には、当該管海官庁の嘱託により、抹消回復登記をなすことができる(船登規則1条、不登法67条、68条)。
(注1) 抹消登記は、船舶所有者が当該事由を届け出ることにより、あるいは、管海官庁が何等かの機会に知ったことにより、調査を行い、適法と認めたときは、当該船舶の船舶原簿保管官庁が嘱託することによって行われる。
(注2) 昭和32年政令第16号による船舶登記規則の一部改正前においては、登記の抹消の申請は所有者がなし、その後抹消の登録の申請をもなすべきものとされていた。しかし、抹消原因の確認は、実質的審査権を有する管海官庁においてなすことを便宜とするので改正されたのである。
2. 嘱託手続
船舶の登記の抹消の嘱託は、登記申請の一般通則によるが、書類の提出は、郵送によることも認められている(書留又は内容証明附とすべきであろう)。
(1) 嘱託書の記載事項
船舶の登記の抹消の嘱託書に記載すべき事項は、申請に関する規定が準用される(船登規則1条、不登法25条2項参照)。
(ア) 船舶の表示(船登規則7条1号〜4号)
登記の抹消を嘱託する船舶の表示に関する事項として、船舶の種類、船舶の名称、船籍港、船質及び総トン数を記載するが、これらは登記簿上の当該事項の記載と一致していることを要する。しかし、管海官庁において船舶の表示の変更登録はなしたが、それに対応する変更登記(船登規則21条)の申請を懈怠している間において、船舶法第14条の規定により抹消の登録がなされた船舶の場合には、当該船舶の同一性が確認しうる限り(後出(2)(イ)の書面による)、その登記の抹消はなしうるものとされる(船舶はすでに登記及