(イ) 登記の目的
「所有権保存の登記」とするが、共有船舶の保存登記の場合には、併せて「船舶管理人選任の登記」と記載する。すなわち、船舶が共有の場合には、船舶管理人の選任を要し(商法699条1項)、その選任及び代理権の消滅は、これを登記することを要するものとされるからである(商法699条3項、船登規則20条)。
(ウ) 所有者が会社その他の法人である場合の役員等の全員の表示(船登規則19条1項)
申請人たる所有者が会社その他の法人である場合には、合名会社にあっては社員、合資会社にあっては無限責任社員、株式会社又は有限会社にあっては取締役、その他の法人にあっては代表者の全員の氏名を記載する。かかる事項を記載する趣旨は、船舶登記制度の適用される船舶、すなわち、船舶法第1条第3号及び第4号の規定による日本船舶たることを証明することにある。
(エ) 船舶が共有の場合の船舶管理人の表示(船登規則20条)
船舶が共有である場合には、必ず船舶管理人の住所又は主たる事務所及び氏名又は名称を記載する((イ)参照)。
(オ) 保存登記については登記原因は存在しないから、登記原因及びその日附を記載することを要しない(船登規則14条2項)。
(4) 申請書の添付書類
船舶所有権保存の登記の申請書に添付すべき書類は、次のとおりである。
(ア) 申請書の副本
保存登記については、登記原因を証する書面は存在しないのであるから、必ず申請書の副本を添付する。
(イ) 船舶件名書の謄本(船登規則16条1項)
当該船舶の船籍港を管轄する管海官庁(又は総トン数の測度の受託官庁)が交付した船舶件名書の謄本を添付する。
なお、既登記の船舶につき、登記簿が滅失し、その回復登記の期間が経過した場合において、所有権の保存登記を申請するときは、船舶件名書の謄本に代えて(管海官庁はこれを再交付しないから)当該船舶の船舶原簿の謄本又は船舶国籍証書を添付すれば足りるものとされる(昭和31年12月24日民事局長通達民事甲2893号参照)。
(ウ) 所有権を証する書面(船登規則14条1項)
この書面は、具体的には次のごときものである。
? 日本において船舶を建造し、直接原始的に所有権を取得した場合には、その造船者(造船所の技師長でもよいものとされている)の証明書(いわゆる造船証明書)。承継取得の場合には、譲渡人の所有していたことの証明書(造船者等の証明書)及び譲渡を証する書面
? 外国において船舶の建造を発注して取得した場合には、外国の造船者の証明書及び船舶受渡証明書