1. 登記申請手続
(1) 前提手続(船舶の総トン数の測度)
船舶所有権保存の登記を申請する場合には、まずその前提要件として、当該船舶の船籍港を定めて、その船籍港を管轄する管海官庁に対し、船舶の総トン数の測度(新規測度)を申請しなければならない(法4条)。すなわち、船舶の存在及び表示事項の確認のために、登記申請書に船舶件名書の謄本を添付する必要があるからである。
(2) 申請人
船舶所有権保存の登記の申請人は、当該船舶の所有者であるが、原始取得たると承継取得たるとを問わず、当該船舶につき書面により自己が所有者であることを証する者が申請するのである(船登規則14条1項参照)。したがって、未登記の船舶の譲渡を受けた者でも直接自己の名義に保存登記の申請をなすことができるものと解されている(注)。
船舶が共有の場合には、共有者全員で保存登記の申請をなしうることは勿論であり、民法252条ただし書の規定により、保存行為に該当するものとして、各共有者単独でも、共有者全員のために、所有権保存の登記の申請をなすことができる。しかし、共有者の1人が自己の持分のみの保存登記をなすことはできないものとされる。
(注)(1) 登記簿の滅失による回復登記の期間の徒過した場合における当該登記簿に登記されていた船舶について、その所有権の登記名義人から売買等により所有権を取得した者は、所有権を証する書面として、前所有者の船舶原簿の謄本又は船舶国籍証書及び売買契約書などの取得原因を証する書面を添付して、直接に、所有権の保存登記を申請することができるものと取扱われている(昭和31年12月24日民事局長回答民事甲2893号)
(2) 製造中の船舶につき抵当権設定の登記をした船舶について、製造中に所有権の移転がなされた場合には、新所有者は、登記義務者からの所有権の承継を証する書面等の自己の所有権を証する書面を添付する限り、前記(1)と同様に直接に、保存登記をなしうるものと解すべきであろう。
(3) 申請書の記載事項
船舶所有権保存の登記の申請書に記載すべき事項は、一般通則にしたがうが保存登記の性質上次の特則がある。
(ア) 船舶の表示に関する事項(船登規則7条、15条)
一般通則による事項(船登規則7条1号〜4号)のほか、?機関の種類及び数、?推進器の種類及び数、?帆装(帆装に限り記載する)、?進水の年月(不詳のときは、不詳と記載する)、?国籍取得の年月日(外国において製造した船舶に限り記載する)(船登規則15条1号〜5号)を記載する。これらの事項は、船舶件名書の謄本の記載内容と一致していることを必要とする。
ここに、日本国籍取得とは、日本船舶を所有しうる者が外国において発注し、建造された船舶を取得する場合をいうのではなく、外国船舶の一般的承継取得の場合をいうのである。また、その取得年月日は、当該船舶の現実の引渡があった日と解すべきであろう。