2. 船舶登記の申請
(1) 登記申請行為
登記の申請は、申請人が国家機関たる登記所に対して一定の内容の登記をなすべき旨を要求する公法上の行為であって、一定の方式を必要とする要式行為である。したがって、登記申請行為が成立するためには、登記申請能力があること(意思能力あることのみで足り、無能力者も申請をなしうるものと解されている)、申請が真意であること、及び申請方式を具備していることが必要とされる。
(2) 登記申請人(申請当事者)
(ア) 共同申請の原則 登記の申請は、登記権利者及び登記義務者が共同してなすことを原則とする(船登規則1条、不登法26条)。
現行登記法上、登記権利者とは、申請されている登記がなされることにより、実体的権利関係において利益を受けることが登記簿上形式的に表示されうる者をいい、登記義務者とは、申請されている登記がなされることにより、実体的権利関係において不利益を受けることが登記簿上形式的に表示されうる者をいうのである(登記義務者は、登記簿上登記名義人として現に表示されているものでなければならない。登記法上においては、実体法における登記権利者、登記義務者の概念をさらに限定した意味で用いられている)。
(イ) 単独申請 共同申請によらなくても、登記の真正が保持されうる場合又はその登記の性質上登記義務者なるものが存在しない場合などには、登記権利者又は登記名義人の単独申請が認められる。すなわち、
? 判決による登記(ここにいう判決とは、登記申請をなすべき旨の給付判決に限られ、和解調書、調停調書、仲裁判断を含むものと解されている。船登規則1条、不登法27条。昭和25年7月6日法務省民事局長通達民事甲1832号、昭和29年1月6日民事甲2560号通達等参照)、
? 相続による登記(船登規則1条、不登法27条)、
? その他初めてなす船舶の所有権の登記(船登規則14条)、登記名義人の表示の変更の登記(船登規則1条、不登法28条)、船舶管理人の表示の変更の登記(船登規則27条)、船舶管理人の更迭の登記(船登規則26条)、また、滅失回復登記(船登規則1条、不登法23条、69条)、登記した権利がある人の死亡により消滅した場合の権利の抹消登記(船登規則1条、不登法141条)、登記義務者が行方不明の場合の権利の抹消の登記(船登規則1条、不登法142条)、仮登記の抹消登記(船登規則1条、不登法144条)などがある。
(ウ) 相続人による申請 登記原因はすでに存在しているが、登記権利者又は登記義務者がその登記を申請する前に、相続その他の一般承継が開始した場合には、それらの相続人が登記請求権又は登記義務を承継するのであり、被相続人が申請し得た内容の登記を相続人が申請しうる(船登規則1条、不登法42条参照。なお、相続による登記とは異なることに注意すべきである)。
(エ) 代位申請 民法第423条第1項に規定する債権とは、広く請求権を意味するのであり、登記請求権もこれに属するものとされている。この規定に基づき、登記権利者(債