第2節 船舶登記手続
第1款において、船舶登記手続の通則的事項の概要を述べ、第2款以下において、主として船舶の登録と関係を有する登記の特則的事項について述べる。したがって、船舶の委付の登記(前出参照)、船舶の抵当権の登記及び船舶の賃借権の登記については、本書では触れない。
第1款 総説
1. 船舶登記手続開始の態様
(1) 申請主義 船舶登記手続は、不動産登記の場合と同様に、原則として当事者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託により開始される(船登規則1条、不登法25条1項)。いわゆる申請主義をとるのである。
(ア) 登記は、私権保護を本来の目的とするものであるから、原則として、当事者の申請により登記手続が開始され、私的自治の原則が支配する。しかし、船舶の所有権の登記に関しては、前述のごとく公法上義務が課せられていることに留意すべきである(法5条参照)。
(イ) 官庁又は公署の嘱託により登記をなすべき場合は、船舶登記規則その他法律により定められている。すなわち、
? 官公署が自己のためにする場合としての、官公有船舶に関する権利の取得の登記(船登規則1条、不登法31条参照)、
? 当事者のためにする場合としての、官公有船舶に関する権利の登記(船登規則1条、不登法30条参照)、
? 滞納処分に関する登記(国税徴収法68条、船登規則1条、不登法28条ノ2、28条ノ3、29条、148条参照)、
? 仮処分命令による仮登記(船登規則1条、不登法32条参照)、
? 予告登記(船登規則1条、不登法34条、145条参照)、
? 船舶登記の抹消登記(船登規則30条参照)その他民事訴訟法等の規定による登記がある。
官公署の嘱託による登記手続については、原則として申請による登記に関する規定が準用されるが、(船登規則1条、不登法25条2項)、官公署の特殊性及び手続の簡素化を考慮して特則が設けられている。
(2) 例外 申請主義の例外としては、登記官が職権により登記をなす場合 ―更正登記(船登規則1条、不登法64条参照)、抹消登記(船登規則1条、不登法149条、151条参照)、未登記の船舶所有権の処分の制限の登記(船登規則29条参照)などに関するもの― と、法務局長又は地方法務局長の命令により登記をなす場合(船登規則1条、不登法155条、156条、157条参照)とがある。