常金穀賃借証書ト見徹スベシ」と規定した。ここに公証とは、金穀の借主、預り主が船舶引当の証文と船舶の図面とを、その船舶の管轄地の戸長役場に差出し、戸長の奥書、割印を受けることをいうのである。
(3) 旧不動産登記法
公証制度は、複雑な船舶上の権利関係を公示するものとしては、なお多くの不備欠陥を有していたので、不動産登記制度の改革を目的とする不動産登記法(明治19年8月法律1号)―いわゆる旧登記法―の制定に伴い、船舶の登記制度も樹立されるに及んで、この公証制度は廃止された。旧登記法(明治20年2月〜32年6月)は、登記をもって物権変動の第三者対抗要件とするフランス法に則ったものであって、現行不動産登記法の原型がここにできたわけである。
この基本原則がそのまま発展した現行の船舶登記規則と特に異なる点をあげると、
? 登記事項は、地所、建物又は船舶の所有権移転、質入、書入、差押等に限られた。
? 登記の種類については、附記登記、仮登記、予告登記のごときは認められなかった。
? 登記簿は、一用紙一船主義をとらず、一用紙に数個の船舶を登記することも認められた点である。
(4) 船舶登記規則
現行商法及び船舶法の制定に伴い、特に商法第686条第1項及び第687条の規定、その他第699条、第848条等の規定との関連において、旧登記法もまた改正を要することとなった(不動産登記についても、民法典の施行に伴い、より整備された現行不動産登記法の制定を必要とした)。そして、船舶法第34条は、船舶の登記に関する規程は勅令(現在では政令)をもって定める旨を規定しているので、これに基づき、現行の船舶登記規則(明治32年6月勅令270号)が制定され、明治32年6月16日から施行をみたのである。さらに、その細則を定める船舶登記取扱手続(明治32年6月司法省令35号)も制定された。船舶登記規則は、全文53条から成り、不動産登記法の多くの規定を準用している。
第2款 船舶登記制度が適用される船舶
船舶登記規則の適用を受けなければならない、又は受けることができる船舶は、次の要件を備えるものである。
(1) 日本船舶であることを要する。
船舶の登記は、日本船舶のみについて存立するものであり、外国船舶は登記の対象となり得ない(法5条1項、14条1項、船登規則14条1項、18条、19条、30条1項等参照)。
(2) 総トン数20トン以上の船舶であることを要する。
商法第686条第1項は、船舶所有者は特別法(船舶法及び船舶登記規則をいう)の定めるところにしたがい、登記をなし、かつ、船舶国籍証書を請受けることを要する旨を規定する。そして、同条第2項において、前項の規定は総トン数20トン未満(石数については、計量法の