? 船舶の国籍と無関係に純私法的な登記制度によるもの、
? フランスのように、登記及び登録の二元主義を認めるもの、等がある。
わが国は、登記及び登録の二元制度をとり、登録は主として公法上の必要性により管海官庁の管掌に属せしめ、登記は純私法的に船舶の私権の状態を公示することを目的として登記所の管掌に属せしめられている。また、その登記事項は、所有権、抵当権、賃借権、船舶管理人に関する事項に及び、日本船舶のみを対象とするものである。わが国の船舶の公示制度は、このように、登記及び登録の二重の手続を必要とするのであるが、そのために、手続は複雑であり、両者の抵触を生ずる場合もあるので、立法的には、両制度を統一し同一官庁において管掌せしめる方が適当であろう(注)。
(注) 海商学者は、ひとしく一元主義を主張するが、加藤正治博士「海商法講義」には、次の趣旨の利点があげられている。
? 両官庁に申請することよりも同一官庁において取扱う方が当事者に便宜である。また抵当権に関する事項より所有権に関するもののほうが多いから、管海官庁において取扱うのが良策である。
? 2官庁で取扱うよりも1官庁で取扱う方が相違や誤謬が少い。
? 船舶の登記は、専門知識を必要とするから、管海官庁で取扱う方が良い。
なお、船舶登記事務は、外国では、管海官庁で取扱う例が多い。英・米・仏・伊・オーストリアなどがその例である。司法官庁で取扱う国としては、ベルギー・スペイン・ポルトガルなどがある。
3. わが国の船舶登記制度の史的発展
船舶の自由取引の安全を保障することをもって主目的とする近代的登記制度は、船舶に対する封建的拘束を排除し、その取引の自由を法的に認めた明治時代以降においてはじまる。
(1) 船舶免状及び鑑札の制度
明治維新とともに、西洋形風帆船、蒸気船の所有が許されるに至ったが(明治2年10月太政官布告968号)、同時に商船規則により初めて船舶免状の制を定め(明治3年1月太政官布告)、船舶を所有する者は民部、外務両省連印の免状を受有すべきものとした。これが、今日の船舶国籍証書に該当するものであり、船税規則(明治4年発布、商船規則中船税の改補)による鑑札とともに、不完全ながら船舶上の権利の公示方法としての役割をなしたもののようである。免状の制度は、その後改正されたが、これについては前に述べた。
(2) 公証制度(船舶売買書入質手続)
元来、前記の免状及び鑑札は、船舶所有の公証とし納税の標目という二つの目的を有するものであり、船舶取引のすべての場合を考慮した制度ではない。したがって、特に船舶の担保取引のための公示方法として採用されたものが、いわゆる船舶売買書入質手続(明治10年3月太政官布告28号)である(明治10〜20年)。この布告における船舶取引の公示方法は、奥書・割印をなすのであって、公証制度と称せられるものである。同布告は、「人民所有ノ船舶ヲ売買シ又ハ金穀等借用ノ為メ書入質トナサントスル時ハ明治8年9月第148号布告諸建物書入質及売買譲渡規則ニ準ジ売主又ハ書入主ヨリ其船舶ノ図面ト約定証書ニ本船管轄地戸長ノ公証ヲ受クベシ。若シ右ノ手続ヲ為サザルニ於テハ其約定証文ハ裁判上尋