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第5章 船舶に関する登記

 

―船舶登記規則―

 

船舶に関する登記制度は、商法第4編(海商)及び船舶法の規定により存立するものであり、その登記手続は、船舶登記規則及び船舶登記取扱手続において定めるのである。元来登記制度は、純私法的な制度であるが、船舶に関しては、行政上の目的と結びつけられ、船舶法に基づく船舶の登録と密接不可分の関係におかれている。本章においては、船舶法の規定との関係を明らかにし、かつ、その限りにおいて船舶登記制度の特質を述べることとする。

船舶の登記手続は、原則として、不動産登記法の規定が準用されているから(船登規則1条、船登手続24条参照)、物権変動の理論及び登記手続の詳細に関しては、物権法及び不動産登記法の著作を参考とせられたい。

 

第1節 総説

 

第1款 船舶の公示制度

1. 船舶の公示制度の沿革

船舶登記制度は、中世ゲルマン法の船舶不動産観に由来し、すでにその頃から存在していたようである。すなわち、中世法において、船舶の譲渡、質入等の法律行為は、不動産と同じく都市の公簿に公示して、これをなすことができた。後年現在の各国の不動産登記制度がこの公簿の制度から分化発展したように、船舶登記制度もまたこれから直接発展すべきものであったが、ローマ法的船舶動産性論と、1660年のイギリスの航海条例の国籍の公示を主目的とする登録制度の影響を受けて、船舶登記制度は、欧州において各国独自の発展を遂げたものといわれる。

船舶の公示制度は、全く私法的なものとして発足したものであり、取引の安全を期するため、船舶に関する物権的関係の変動を公示する目的から出たものである。しかし、現今においては、国内的には航行の安全その他の行政的取締の必要のため、また国際的には自国船舶及び外国船舶の区別による取扱の差異のため、公法的関係と結びつけ、各国いずれもこの公示制度を採用しているのである。

 

2. 船舶の公示制度の立法主義

海運国は、いずれも船舶の公示制度を設けているが、法制的には区々である。すなわち、

? イギリスのように、公法目的を主とする登録制度に登記制を一元化するもの、

 

 

 

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