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法制定当時(明治32年)は、船舶が大変貴重な資産であり、かつ、数も限られていたことから船名の取扱いについて社会的影響が大であり、従来から許可を要していたが、現在は船舶数の増加に伴い、全国的に同一名称の船舶が多数存在しており、船名に係る名称変更の許可制についての必要性が乏しくなり、船名変更の許可を廃止しても、変更登録等の手続きにより船名変更の把握は可能であるため、船名に係る名称変更の許可制を廃止した(平成6年11月法律97号)。

 

第2節 船籍港

 

船籍港とは、船舶所有者が船舶の登記及び登録をなし、船舶国籍証書の交付を受ける地をいう(法4条、5条、船登規則2条)。総トン数20トン未満のいわゆる船籍票船についても船籍港の規定が存するが(船籍政令1条参照)、これについては省略する。船籍港は、船舶所有者が定めるものであり、日本船舶として新たに登録される船舶についてはもちろん、登録されている船舶の所有者が変更した場合にも、新所有者が新たにこれを決定すべきものである(法4条、昭和26年6月15日船舶局長回答舶登509号)。船籍港となすべき地は、日本国内の地であり、船舶の航行しうる水面(当該船舶が航行しうるか否かを実際に認定することは困難であるから、一般に小型船舶が航行しうる河川等であっても、差し支えないものと解すべきであろう。)に接した市町村(市町村の存在しない郡では郡)に限られ、原則としてその船舶所有者の住所(注1)に定めることを要する(法4条、細則3条)。船籍港は、船舶に関する行政法上重要な意義を有し、また船長の代理権の範囲を定める標準となるものである(商法713条参照)。

共有船舶の船籍港は、筆頭者(持分最大の者)の住所を船舶所有者の住所とみなして定めるものとし、持分最大の者が2人以上ある場合には、共有者の希望により持分最大者中の1人の住所をもって船籍港とする(注2)(昭和15年1月12日管船周回答舶監19号、昭和26年6月23日船舶局長回答舶登510号)。なお、船舶管理人(商法699条)は、船舶の登録上においては関係がない。

(注1) 住所とは、船舶所有者の生活の本拠をいう(民法21〜24条参照)。法人については、会社の場合はその本店の所在地(商法54条、有限会社法4条)、その他の法人の場合は、その主たる事務所の所在地(民法50条)が住所となる。

(注2) 運輸施設整備事業団(旧船舶整備公団)との共有船舶については、共有会社が船舶管理人としての業務を行う関係上、持分の如何にかかわらず、船籍港を共有会社の住所に定めうる(平成9年9月22日海上技術安全局長通達海総379号)。

※ 船舶法上の船籍港は、人に関する本籍に類似するが、登簿船については、原則として所有者の住所に定めることを要し、運航上の拠点と住所とが異なる場合には置籍しうるから、実質的には運航上の拠点と船籍港とは、一致するのが一般である(商法713条、717条参照)。

 

 

 

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