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第3章 船舶の識別

 

船舶は、さきに述べたように、その性質は動産であるが、名称、国籍、船籍港及び総トン数を有し、これによってその個性を示している。これらの事項及び所有権の所在は、船舶の識別の要素として、国家が船舶に対して取締及び保護を行うために重要であり、また、私法上においても意義を有する。そして、これらの事項の決定は、船舶法上船舶国籍証書又は船籍票の交付を受ける前提要件となるものである。以下、これらについて分説する(国籍については第2章参照)

 

第1節 船舶の名称

 

1. 船舶の名称(船名)の意義

日本船舶は、固有の名称を有する(法7条、船籍政令2条、船籍省令11条、ただし総トン数5トン未満の船舶については規定はないが、古来から一般に船名を有している。)。名称の選択は、自由であり(注1)他船と同一又は類似の名称であっても差し支えないが、なるべくその末尾に「丸」の文字をつけることになっている(注2)(手続1条)。

同一の名称が他船につけられていても、その他の個性によって区別しうるが、私法上の関係においては、時として同一名称のために、契約に錯誤等を生ずることもあるから、現に使用されている名称の選定は避けることが望ましい。

(注1) 外国文字の船名は、船舶法施行細則第44条及び同取扱手続第22条の規定上船名として登録されない(昭和28年1月16日船舶局通牒舶登31号)。また、番号(たとえば1号、2号等)のみをもって船名とすることも避けるべきである(昭和4年7月16日逓信省管船局通牒舶589号)。当用漢字の使用は、強制されないが、なるべく使用することが望ましい(昭和25年9月28日船舶局通牒舶登284号)。

(注2) 船名につける「丸」の起源については、諸説があるが、他書に譲る。わが国においては、船名に、「丸」をつける慣習が普及しているので、その名称を見聞きしたのみで船舶であることが推定しうるように「丸」をつけることを奨励しているものと思われる。ただ、官公署船については、一般私船と区別するため、軍艦をはじめとして従来から「丸」をつけないものが多い。

 

2. 船舶の名称変更の制限の廃止

一度選定された名称は、人名と同じく容易に変更されるべきものではない。それは、船名の変更により、公法上又は私法上において影響するところがあり、詐偽又は誤解等の弊害を惹起するおそれがあるからである。

したがって、船舶所有者が、その所有する総トン数20トン以上の日本船舶の名称を変更しようとする場合には、公法上の監督及び取締における混乱の防止等の観点から、船籍港を管轄する管海官庁の許可を受けなければならないこととしていた。

 

 

 

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