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で、「自今蒸汽船ハ10屯、風帆船ハ20屯以下及ビ湖川港湾ニ限リ運転スルモノハ其ノ船免状ヲ受有スルニ及ハス」こととなった。かくして、今日の登簿船と不登簿船に類似する区別が生じたのである。

さらに、明冶29年4月に至り、逓信省令第3号をもって、登簿船免状取扱規則が制定され、登簿船免状下附の手続が改められ、従前の内務省丙第25号達は廃止された。登簿船免状取扱規則は、全文12条より成り、現行船舶法の施行まで存続し実施されたものである。その第1条には、「登簿船免状ヲ受有スベキ船舶ヲ取得シ帝国ノ船籍ニ編入スル者ハ本船管轄庁ヲ経由シテ願書ヲ逓信省ニ差出シ登簿船原簿ニ登録ヲ受ケ登簿船免状ノ下附ヲ請フ」べき旨を規定し、また願書の記載事項、添付書類、管轄庁の手続、登簿船原簿の備付及びその登録方法を定め、あるいはまた、変更の登録、登簿船免状の書換、再交付、登簿船原簿の削除等の手続を定めており、ここにおいて、近代的船舶登録制度が成立し、船舶法の基礎制度が成立し、船舶法の基礎が定められたのである。

一方、不登簿船については、明治29年12月逓信省令第25号をもって、(旧)船鑑札規則が制定され、明冶30年1月1日より施行された。同規則は、登簿船免状を受有することを要しない船舶であって、?航行の用に供しない船舶、?登簿トン数5トン未満又は積石数50石未満の帆船、?櫓櫂のみをもって運航する舟を除いては、すべて船鑑札を受有すべきことを定めている。同規則の施行に際しては、明治4年8月に制定された船税規則(商船規則中船税の改補)により従来受有していた鑑札は、同規則に定める船鑑札に代用しうることとされた。しかし、この(旧)船鑑札規則は、船舶法に基づき明治40年5月に制定された船鑑札規則(明治40年逓信省令第24号)の施行により廃止された。また、船鑑札規則も、47年間の永きにわたり施行されたが、地方自治法(昭和22年法律第67号)の一部改正(昭和27年法律第306号)により、国に属する事務を地方公共団体の長にいわゆる機関委任する場合には、法律又はこれに基づく政令により行うことを要する(地方自治法148条)こととなったため、同規則は廃止されるとともに船舶法に基づき新たに小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令(昭和28年法律第259号)が制定され、昭和28年9月1日から施行され現在に至っている。

 

2. 船舶法の制定

明治27、28年の戦役を契機としてわが国の経済は急激に発展した。これに伴い、海上輸送の重要性及び国防上の見地から諸種の海運政策が樹立された。これらの政策は、客観情勢の好転とあいまって、わが国の海運を飛躍的に発展させる原動力となったが、このような状況の下において、

(1) 保有船腹の急増、航路の伸長とともに、海運政策の一環として、従来きわめて不完全であった海事法規の基礎を定める必要があった。

(2) 明治27年の日英通商航海条約の改正条約は、日本船舶とみなすべき標準は、日本の国法によるべきものとし、また沿岸貿易の権利も各本国法の規定に一任することを原則としたから、同条約の実施のためにかかる事項に関する法令を整備する必要があった。

 

 

 

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