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でに時間がかかった。実験は長期に渡って続け、バクテリアが油を分解できる効率を最終的にどこまで高めることができるかを調べたい。次の原油流出事故が起きたときに、この実験データを応用できればと思っている。」

1997年2月、9箇所の調査地区でバイオの効果が出ているというデータが得られた。

当初の計画よりも実験期間が短縮された。化学肥料を加えた効果で油が分解される効率は、2倍になった。海岸に固形化学肥料を埋めてゆっくりと浸透させた場合、毎週液体肥料をスプレーした場合と同じ効果が得られた。

R.スワネル(AEAテクノロジー)は説明する。「これでバイオが流出事故対策として認知されると思う。しかし、これは早急に油を除去する必要のある行楽地にはむかない。今回は8週間で効果が現れたが例えば、デンビーの海岸であれば、これでも遅すぎる。もっと速効性のある方法が必要である。しかし、油が残留している海岸で環境を重視して油を除去するなら、バクテリアが自然に油を分解する効率を高めるこの方法が向いていると思う。

今回の原油流出事故は、原油流出の対策を考える多くの人々から注目されている。バイオの効果を示せば、次に原油流出事故が発生したときに、この技術を適用してもらえると思う。」

 

5. 生態系への影響

 

(1)貝、海鳥への影響

イギリスではこのシーエンプレス号の事故の前から対策が用意されていた。しかしそれでも生物への影響は避けられず、海岸には数百羽の油まみれの鳥が存在した。どの鳥を救出すべきかわからず、油まみれの島たちはまたもや原油流出事故のシンボルとなった。

最も懸念されたのは、カーマーゼン湾の被害状況である。上空から観察したところ、かなりの油が流れ込み、貴重なクロガモの群に被害を与えた。カーマーゼン湾には6,000羽がいると推測され、何処まで被害が広がるか心配された。

生態系への影響は鳥だけではなく、無脊椎動物も影響を受けた。夏にマリンスポーツが盛んなデイルビーチでは、原油の薄い膜が流れてきたが、原油には有毒な揮発成分が含まれていたため、貝に影響が出た。引き潮時に見ると砂の中の貝(トゲザロガイ)が上に出てきて殻を開いており、触ると閉じて、しばらくするとまた開くという動作をするのである。

事故から起こったことから学ぶことが重要である。この辺りー帯は、既に50年以上も観察されてきた貴重なデータのある特別な場所であり、原油に汚染された可能性のある生物について今後も観察を続ける必要がある。オカメブンブク、フジツボ、カサガイ、マタキビガイなどの観察を続け、生息数の変化をみて原油の影響を長期的に見るのである。

原油流出の長期的な影響の調査が始まり農漁業食糧省は魚介類を調査中であり、

 

 

 

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