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また、海岸に漂着した油は、手作業(岩の油をモップでふき取る、ブラシでこする)でほとんどの油が取り除かれた。しかし、夏休みが近づくにつれて、環境に配慮するだけではいかなくなった。すなわち、海水浴客の減少が懸念されたのである。

 

4. バイオレメディエーション

 

(1)自然浄化

冬の嵐は回復への一番の促進剤でもある。「砂利の下方の油が浮かんできたが、この方がよい。海岸の下の方に残っていた油を浄化する自然のクリーンアップ作戦である(P・ダイリンダ(スワンシー大学))という指摘がある。

SEECはペンブロークシャー沿岸の油の処理を検討した。

R・スワネル(AEAテクノロジー)は指摘する。「溝を掘って油がどの程度浸透しているのかを調査、深さ方向には残っていることを確認した。砂利の海岸で砂利の表面はきれいである。波が油を洗い流したためである。1989年3月、エクソン・バルディーズ号が座礁、3.5万トンの原油が流出した。この時、アラスカの海岸で油を高圧水で洗い流したため、油を地中深くまで浸透させてしまい、その油は今でも残留しているという砂利の浜での原油除去の教訓が得られた。」

この教訓を生かしてペンブロークシャーの海岸で、ある実験が行われた。油で汚れた砂利を波打ち際まで移動させて、波が自然に油を洗い流すのを待つのである。乳化した油が浮き上がり、油は海に流れバクテリアにより分解される。

T.ルーネル(AEAテクノロジー)は言う。「過去の教訓(エクソン・バルデイズ号事故)を生かし、自然の法則に反する措置は取らなかった。自然の法則にのっとって分散、希釈、分解されるようにした。今回、バルディーズ号の2倍の原油が流出したが、海岸への影響を及ぼした原油量は今回がかなり少なかった。」

 

(2)バイオレメディエーションの実験

この事故では汚染現場が行楽地であり、早急に回復させる必要があったことから、時間のかかるバイオ・レメディエーションは適用されなかった。より速く分解されるようにバクテリアを活性化できるかが焦点であったが、すぐにバイオ・レメデイエーションの許可が下りず、9月にバイオ・レメディエーションの実験許可がおりた。

R.スワネル(AEAテクノロジー)は説明する。「自然界に油を分解するバクテリアがいる。油を速く分解するにはバクテリアの活動を活性化させる。これがバイオ・レメディエーションである。実験では、バクテリアを繁殖させ、油を分解しやすい環境を作ろうとしている。酸素が充分ある中で、窒素、リンが必要である。酸素は充分あったが窒素、リンが不足するので窒素、リンが入った粒状の化学肥料を通気性の良い靴下につめて、浜に埋めてみた。海岸に栄養が徐々に溶け出すのである。この実験は今までヨーロッパで行われておらず、許可が下りるま

 

 

 

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