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環境が元に戻るまで続ける予定である。

政府は専門家に総合的な調査を依頼したが、原油流出事故の長期的な被害調査は、SEEC(シーエンプレス号環境評価委員会)に委ねられた。SEECは3カ月間に様々な団体に100種もの調査を依頼した。貝から鳥までの食物連鎖の影響について、長期的な調査を計画した。その結果、クロガモの餌である貝の被害が深刻であることがわかった。

カーマーゼン湾の渡り鳥クロガモは、1995年には1万7000羽、1996年には14,500羽以上が観察された。しかし、1997年には4,000羽しか観察されず、原油流出の影響ではないかという指摘もある。

岩に付着している生物は影響を受けた。イガイ、サルガイは一番の被害を受けたが、海水から餌をこし取っているが、海水中の油粒子も吸い込み、体内に炭化水素を蓄積した。事故現場に近いところでは通常の数百倍となった。ただし、カサガイの被害が大きく、事故直後に半数近くが死んだ。夏までにはある程度まで、12月までにはかなり回復した。タマキビガイの生息数は1996年にかなり激減した。ただし、この貝の生息数は年によって変化するので一概に原油の影響だと断定できない。

ある生物に異変が出ると、浜全体に影響が出る。いつもとまったく違う光景が広がる。7月、緑(海藻)に覆われた岩場が出現した。これを食べるカサガイが減少したせいである。しかし、8月には一面の海藻は消えた。

 

(2)漁業への影響

事故発生当初からもう一つ懸念された問題がある。地元の重要な産業である漁業への影響である。農漁業食糧省は、事故直後から魚介類を定期的に検査してきた。初期の影響は想像したほどではなかった。

R・ローは指摘する。「調べた範囲では、魚、カニ、ロブスターなどの甲殻類が原油流出で大量に死んだということはなかった。小さな2枚貝などが死んだことは確認された。漁業再開の許可を出す前に、魚介類が汚染されていないかどうかを調べた。サンプル中に汚染されたものは無かった。検査は今も定期的に続けられている。魚の肝臓、筋肉組織、カニやロブスターは肝臓、膵臓、胴体か尻尾の内を調べる。」

移動できる生物には原油はそれほど蓄積していなかった。原油流出量を考えると漁業への影響は当初心配したほどではなかった。ほとんどの場所で事故から1年以内に、漁業を再開できた。

 

6. おわりに

 

1996年6月、原油流出の被害を受けた西ウエールズのテンビーがきれいな海岸として表彰された。西ウエールズの湾で多数のイルカを確認。原油流出の後遺症はほとんど見られない。事故から4カ月、夏を前に油の除去作業が終了した。

 

 

 

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