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たところ。

?バイオレメディエーション自体のコストは、これとは別でケース・バイ・ケースで処理されているが、全体のコストとしては、やはり土壌洗浄に付随する作業費用が大半を占める。

 

(2)バイオレメディエーションの適用実施の決定

エニリチェルケ内部では、環境技術部門が決定権を持っており、その決定をひとつの環境オプションとして、該当機関やクライアントに提案する。相手先は、ケース・バイ・ケースだが、地方共同体や国、あるいはその出先機関がクライアントになることが多い。最終的な決定、すなわち、提案オプションを採用するかどうかは、汚染サイトの管轄当局が決定する。が、技術的な見地からは、エニリチェルケが唯一かつ権威的な提案機関である。

 

?適用実施の諸条件1

バイオレメディエーションが有効とみなされながらも、採用されなかったケースがある。

 

事例)

1995年、ティレエア海のリボルノ(イタリア半島の西側中部)の沖合で大きな油漏れの事故があった。当然のことながら、初期の救急措置として海水の汲み取りなどの物理的修復が行われたが、汚染は広がった。物理的処理の後、市販のデイスパーサルが使われた。事故が起きたのは沖合だったが、海岸に近く、海岸も汚染された。ここでは、バイオレメディエーションを適用することが可能だったが、物理的処理と汚染土の除去、また、溶剤処理による海岸の洗浄が行われた。というのは、汚染地域は、保養地や観光地に隣接しており、短期間での修復が優先したため、地元当局は、時間のかかるバイオレメディエーションよりも、砂を取り替えるという物理的方法を選んだ。もちろん、コストの面では砂地の入れ替え作業よりも、バイオレメディエーションのほうが有利だったが、修復が長引けば観光業やサービス業などの地場産業が大きなダメージを受けることが予想された。

 

以上のように、バイオレメディエーションが採用されるかどうかは、技術的な安全性やコストをクリアーしても、実施地域の社会環境やパブリック・アクセプタンスにより、他の手段が取られることもある。

汚染サイトの修復にバイオレメディエーションを用いるかどうかは、エニリチェルケではケース・バイ・ケースで望んでいた。先にあげたアプローチのように、状況を客観的に分析の上、1)化学処理や物理処理、2)バイオレメディエーション、3) 両者の複合手段といった方法を取っている。

 

 

 

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