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phytane:C18を指標に使ったところ、Inipol EAP22を使用した場合にもっとも生分解が進んでいることがわかった。原油の構成に変化が現れるまで、5日から7日の時間差があったため、この間の呼吸量や微生物数の変化はおそらくInipol中の有機体の分解によるものであると考えられる。油分解は、13日目に高まった。

一方、Max Bacは、コントロールと比較して、生分解の促進はみられなかった。

実験後、油炭化水素の総数は、砂lgあたり、コントロールで23.6mg、Max Bacで26.6mg、Inipol EAP22で18.2mgであった。

ANOVAの提示する統計分析の結果、栄養塩を使用することで、油濃度が高くなる効果がみられた。

Max Bacがコントロールと比較して、生分解率を高めなかったことが明らかになり、一方、Inipol EAP22の方は、油除去を促進することが確認できた。この油除去は、Inipol中の界面剤がおこした機械的なものか、あるいは、生分解によるものである。

生分解の促進を確認するために、炭化水素のblomarker(生物指標)として、17a,21b hopaneとphytaneが使われた。Inipol EAP22のカラームで、もっとも生分解が進んでいたが、他のカラームとの差は小さかった。統計分析では、栄養塩を使用した場合、飽和炭化水素、フェナントレン、代用フェナントレンの生分解が促進されることがわかった。

ここでも、コントロールとMax Bacに大差はみられず、Inipolのみで生分解促進効果が観察された。

 

結論:

実験の結果、Inipol EAP22は、C02排出量を増加させ、化学従属栄養体、炭化水素分解微生物の総数を増加させる効果があった。実験後、残存油の分析を行い、biomarker(生標識)としてphytaneと17a,21b hopaneを用いて見ると、Inipol EAP22を使用した方が、僅差であるが、分解が進んでいた。

Inipolのメカニズムは、まず、Inipol中の微生物に好まれて分解される有機体(オレイン酸など)を供給することによって、炭化水素分解微生物を増やし、(Lee & Levy, 1989, Rivet et al.,1993)その後アルカンの分解が進むというものであるという仮定(Basseres & Ladousse,1992)が、実験の結果より、証明された。

Max Bacでは、測定したすべての化学・生物パラメータにおいて、コントロールとの間に差がみられなかった。微生物数の増加は、油を加えたためにおこったと考えられ、栄養塩の効果は、ほとんどなかった。Max Bacの栄養塩は目に見えて溶解が遅く、実験の終わりまで溶解せずにとどまっていた。

実験によるシミュレーションでは、垂直方向への潮流はあったが、水平方向への潮流で砂が洗い流されるということがなかった。この条件下では、わずかだが生分解促進効果がみられた。

 

 

 

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