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(2)89年6月の実験[3,5]

テーマ:パラメータの変更(油濃度の変更、砂浜と塩湿地(溶存酸素量の変更))

 

a. 調査概要

低エネルギー砂浜と塩湿地で蝋状の原油(Terra Nova原油、2種類の濃度)を使い、農業用(prilled ammonium nitrateとgranular triple superphosphateから成る)の水溶性栄養塩グラニュール(2種類の濃度)を定期的に使用した。再びNitexバッグを使用した。調査の目的は、微生物の変化と化学変化を見ることで、太平洋地域の油流出処理における栄養塩による生分解促進効果を査定することである。

砂浜と塩湿地に流出したTerra Novaという蝋状原油の分解を7カ月間観察しすたる場所はノヴァスコチアの砂浜(Long Cove)と塩湿地(Clam Harbor)であり、実験時期は、砂浜には1989年6月5日、塩湿地には6月20日にNitex Bagsを埋めた。

 

b. 結果

低濃度の漂流油は数日で現地微生物により生分解されたが、高濃度の油は残存期間が長かった。(n-C11のような軽成分が6カ月後も残存していた。)塩湿地でも同様に高濃度油は残存期間が長かった。低濃度、すなわち汚染度が低い方では、栄養塩による促進効果は見られなかった。しかし、汚染度が高い方では、栄養塩のプロットで、n-C17率は大きく減少していた。ただ、栄養塩の濃度をこれ以上高くしても、更なる生分解促進は見られなかった。このことから、蝋状原油の浄化については、低濃度の時は自然に任せ、高濃度の際にのみ農業用栄養塩の使用が効果的と考えられる。

塩湿地での結果はこれと全く逆で、栄養塩の効果は汚染度の低いときに高く、汚染度の高いときは全く促進されなかった。嫌気性地帯には栄養塩はよく浸透していた。塩湿地の油生分解は溶存酸素量によって制限されていることが多いため、有酸素であり残存油の多くが留まる表面層には、栄養塩使用が効果的だが、高濃度で油の多くが地中に浸透した場合にはあまり効果がないと考えられる。また、潮間においては、栄養塩の残存期間を長くするために開発された親油性栄養塩の使用よりも、農業用栄養塩を継続的に用いる方が効果的であると考えられる。

前の2実験よりも信頼できるが、まだ不足している情報がある。中間(interstitial)の窒素・リン残存量が書かれていないため、今後の実験や、実際の浄化で生分解効果最大化の栄養塩レベルを計算できない。量的推測(quantitative estimates)もできない。[3]

 

 

 

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