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Inipol EAP22を頻繁に(どの程度か不明)散布することで、一度のみ散布したときと比べて効果は上がらなかった。

継続的に栄養塩を使用した場合、時間の経過にしたがって、沈澱物の毒性は減少していた。

しかし、Mictotox bioassayの結果、バイオレメディエーションによる毒性の減少は検出されなかった。逆に、定期的な有機塩の使用後、生分解率が急速になったことから、毒性の強い物質(アンモニアなど)が生成された。

バイオレメディエーションを行った結果、1)油分解を速めたために、生分解の副産物として毒性物質が生成される。2)残存油内のもっとも毒性の高い成分を分解する自然の機能を弱めてしまう。などの環境浄化に否定的な要因が明らかになった。

実験の結果から、各々のケースにより環境要因が異なるため、バイオレメディエーションをするときには、テーラーメイドで行うことが望まれることが確認された。

 

2.4 ノヴァスコチア1989年実験

 

(1)1989年報告[3]

a. 実験の概要

筆者は、栄養塩散布は一度より数回繰り返した方が効果が高いことを指摘している。今回は、メッシュNitexバッグを使い、実験ユニットとしたことである。これによって油汚染された砂の出入りがなくなった。2種類の油(SSCとヒベルニア原油)と、2種類の栄養塩(Inipolと水溶性栄養塩)が使われた。バッグの海浜への設置方法(ランダムかどうか)、レプリカの数、データの分析方法は書かれていない。

栄養塩はほぼ月1回ずつまかれた。

 

b. 結果

筆者は、Inipolを毎月まくことで、SSCとヒベルニア原油の生分解が抑制され、水溶性栄養塩では促進されたとしている。SSCの脂肪族のガスクロ分析では、n-C13の様な軽成分は、水溶性栄養塩を使用した場合、178日後は消失していた。ヒベルニア原油でも、n-C11の様な軽成分は、栄養塩なしと、Inipol使用のプロットでは、353日後も残存していたが、n-C21以下の成分は水溶性栄養塩のプロットでは消失していた。しかし、論文中で時系列に議論されているのは、n-C17/pristaneとn-C18/phytaneのみであった。筆者の結論は、いい加減な統計で自説を裏付けようとしていないから、信頼できる。しかし、統計的証拠でデータの裏付けができていないので、結論はqualitative(質的なもの)にとどまる。Randomized block designで2種の原油を同時に実験し、triplicateで18のバッグ{(コントロール×1+栄養塩×2)×油2種類×レプリカ3つ}を用意し、サンプリングと栄養塩使用の頻度を高くしたら、データの信憑性は大きく高まったことであろう。

 

 

 

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