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b. 結果

結果は、栄養塩の継続的使用による生分解促進効果は観察されなかった。理由は、現地の微生物が有機栄養塩中の有機成分を、油よりも優先して使用していたためである。生分解されないために集積するアスファルテン、レジン等の高分子量成分はおそらく何十年も残存すると考えられる。しかし、これらの成分は一般に生物相に無害であるとされる。

一般に、自然の環境では、油中で生存でき油を分解できる微生物数は、油汚染下で増える。実験から、油分解微生物数や、生分解する成分の特定をするモニタリングでは、油生分解率についてはあまりわからないということが判明した。

実験に用いた有酸素の潮間の砂浜という環境においては、農業用栄養塩の使用により、Scotian Shelf condensateやHibernia原油の生分解は、副作用なしにかなり進んだ。

一方、微生物のディオーキシー生育下では栄養塩の使用は効果がなかった。さらに、農業用栄養塩が、コスト、入手が簡単、低温下でも使用可能、従来の農業用機器を使えるなど、運用面で優位なことが明らかになった。

 

2.3 ノヴァスコチア実験

 

実験時期:不明だが、86か87年と思われる。

 

a. 実験の概要

実験目的はバイオレメディエーションによる総合的な浄化効果を調べることで、具体的には、Microtox bioassayテストで残存油濃度と毒性を減らす効果を測定した。

Hibernian原油の分解を、SRFと親油性栄養塩で促進する実験を行った。栄養塩は無機栄養塩(ammonium nitrate and triple superphosphate)と有機栄養塩(fish bone meal)を用いた。[4]

実験は、両栄養塩が生分解率を上げる効果、また、Venture condensate(濃縮)の毒性を下げる効果を、フィールド実験で比較した。Microtox solid phase test(SPT) bioassayが、Venture condensateのラボテストに最適であると決められた。

 

b. 結果

栄養塩に含まれる窒素・リンの濃度を一定にしたところ、有機栄養塩の方がバクテリアの生育が促進されていたが、化学分析の結果は、無機栄養塩の方が生分解率が高いことを示していた。

また、毒性の強い物質が蒸発した後は、n-heptadecane/pristaneと、n-octadecane/phytaneの比率が下がっていた。

 

 

 

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