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以下、平成7〜9年度の3カ年にわたる各項目別の事業の成果について述べる。

 

(1)バイオレメディエーションのこれまでの成果と研究・実用化動向

本事業を行うに当たり参考となる情報を収集するため、主として海岸におけるバイオレメディエーションについて、文献調査、ヒアリング調査及び海外調査を行い、国内外の研究の成果と今後の動向についてとりまとめた。

1989年のExxon Veldez号のアラスカにおける原油漏洩事故時に、海岸の汚染原油浄化にバイオレメディエーションが適用され、成功したと判断されたことから、米国では本格的な研究が行なわれた。バイオレメディエーション適用にあたっての栄養塩や微生物製剤の評価のためのプロトコルが1993年にNETAC(National Environmental Technology Applications Center, 全米環境技術応用センター)から出されている(現在は、US-EPA NationalRisk Management Research Laboratory(テキサス)に移管されている。また、現在のところ更新の予定は無い)。来国率は、実用化段階にあると言える。

欧州では、英国、ノルウェー、フランス、イタリアなどを中心に実用化を目指した研究が行われている。フィールド試験が行われているものの、実験室レベルの研究が中心であり、実用化段階には至っていないと言える。

今後の研究内容としては、?栄養塩そのものや栄養塩と油が影響しあった場合などの安全性の確認方法の研究、?さらに効果を高める方法の研究(海浜部において栄養塩をいかに効果的に微生物に与えるかなど)、?バイオレメディエーションの適用前の現場の状況の測定・把握方法の研究といった点が挙げられる。

一方、我国では、工業技術院四国工業技術実験所/生命工学工業技術研究所、石油連盟、漁場油濁被害救済基金、海洋科学技術センター、(株)海洋バイオテクノロジー研究所(協和発酵等民間企業24社の共同出資で設立)、環境庁・水産庁等が調査研究を行っている。

我国の調査研究は、現在のところ、油分解微生物の探索、油分解のメカニズムの解明、効果の確認等の実験室レベルの研究が主であり、実用化には至っていない。

 

(2)予備試験

予備試験では、平成7年度から平成8年度にかけて、?試験油の性状設定試験、?油の付着・浸透状況確認試験、?バイオレメディエーションの効果に影響する重要パラメータ同定のための試験を行った。

試験油の性状設定試験においては、海岸に漂着する海上流出油のモデルとして恒温器による風化原油(アラビアン・ライト原油)を設定し、重量減少率、粘度、分解率からみて、これと同等の風化原油を230℃蒸留処理法によって製造できることを確認した。

油の付着.浸透状況確認試験では、海岸に漂着した油がどのように付着・浸透するのかを確認した。砂の粒径が2〜8mmの場合、時間の経過と共に原油がより深い砂利層に浸透していく傾向が認められるが、鉛直方向の水面の移動のみ(波の影響が全くない状態)であり、その浸透深さは余り深くない。最も浸透した場合でも

 

 

 

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