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その70%〜90%程度は表層から6cm程度までの層から回収された。

重要パラメータ同定試験では、窒素源の種類・濃度の高低による効果(分解率)確認、窒素源の投入方法(一括・間欠)による効果の差の確認、溶存酸素濃度の高低による効果確認、初期原油濃度と分解率との関係の確認、及び海浜模擬実験装置での試験方法を検討するためのカラム試験による効果確認を行った。

その結果、窒素源の種類による分解率の差は認められず、窒素源の濃度が分解率に影響を与えること(窒素源の量が過多であったためか、栄養塩の投入方法による差は確認できなかった)、溶存酸素は約1〜2ppmあれば律速しないこと、初期原油濃度が低い場合が分解率が高いことが明らかとなった。また、カラム試験では潮汐を模擬したが分解率は10%程度と低めであった(フラスコ試験では30%程度の分解率)。これは、海水を全部入れ替えたため、残存する微生物数が著しく減少したためと考えられる。

以上の結果から、重要パラメータは窒素源の濃度及び初期原油濃度であると考えられる。

 

(3)視覚効果確認試験

上記(2)の試験では、バイオレメディエーションの効果を分解率の観点から評価を行った。しかしながら、実用化を考える場合、現実的には視覚的な評価が重要になってくる。そこで、A重油を利用して、どの程度分解されたかを目視によって確認する試験を行った。

その結果、フラスコに砂利を入れない場合、2ヶ月後にはA重油が微生物などにより白濁する様子が確認できた。また、フラスコに砂を入れた場合でも、2週間で白濁する様子が確認された(分解率は30〜40%程度)。

 

(4)海浜模擬試験

上記の予備試験の結果を踏まえ、バイオレメディエーションの効果(分解率)や安全性(菌密度、栄養塩濃度の変化)を確認するため、海浜模擬実験装置を使用した試験を行った。この試験では、2種類の栄養塩(三菱化学の製品:スーパーIB、リンスター30、Inipol EAP22)を使用し、比較試験を行った。

その結果、分解率は三菱化学の製品の場合、最大で50〜55%程度、Inipol EAP22の場合は最大で10〜15%程度と推計された。また、菌密度は、栄養塩の減少や油の分解にともなって減少し、栄養塩濃度は油の分解にともない減少するため、菌密度、栄養塩濃度という点からは安全性が確保されることが確認できた。

 

(5)流出油処理効果シミュレーションモデルの開発

バイオレメディエーションの実用化を考える場合、その適用に当たっては予めどのような効果(どれくらいの期間でどの程度の分解が可能か。自然浄化と比較してどの程度期間を短縮できるのか)があるのか、費用はどの程度かかるのかを推計することが必要である(本来ならフィールド試験を行い、その効果等を確認するのが望ましいが、我が国ではフィールド試験ができない状況にある)。

そこで、上記の試験結果などを踏まえて、流出油処理効果シミュレーションモデルの開発を行った。

このシミュレーションモデルによって、油の初期濃度、栄養塩の投入量、海水温度などをパラメータとして、自然浄化(バイオレメディエーションを行わず、そのまま放置した場合)とバイオレメディエーションの比較(分解率、窒素源濃度、菌密度)や、バイオレメディエーションの費用対効果の確認を行うことができる。

 

 

 

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