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6. 流出油処理効果シミュレーションモデルの開発

 

6.1 要約

 

3ヵ年のプロジェクトのアウトプットとしては、復旧目標を設定してバイオレメディエーションを実施した場合に自然浄化の場合と比較して同じ程度の効果を得るためにどのくらい期間を短縮できるのか、その費用はどの程度なのかをシミュレーションを用いて明らかにすることである(期待する効果に対して必要な費用の推定)。

本来であれば、フラスコ試験、カラム試験、水槽試験(海浜模擬実験装置による試験)、フィールド試験と順次スケールアップしてその効果等を確認するのが望ましいと考えられる。しかしながら、我が国では海浜に実際に油を流してのフィールド試験ができないために、現状ではフラスコ試験やカラム試験、水槽試験のレベルに留まらざるを得ない。

そこで、フラスコ試験及びカラム試験のデータをベースとし、海浜模擬試験結果を参考にしつつ、海浜のバイオレメディエーションの費用対効果を推計するシミュレーションモデルを構築した。

このシミュレーションモデルによって、流出油処理に当たり、海浜においてバイオレメディエーションを行った場合の効果(油の分解率)と安全性(菌密度、栄養塩濃度)、及び費用対効果の推計ができる。このモデルによって海浜においてバイオレメディエーションの実証試験を行う場合や実際に油流出が発生し、海浜でバイオレメディエーションを行う場合に、栄養塩の散布量・散布頻度などの方法論に対応したバイオレメディエーションの効果や費用などの推計が可能となり、最適な流出油処理方法を決定する際の資とすることができる。

具体的には、所与の初期の油濃度や海水温度の条件下で、設定した浄化目標を達成するためにはどの程度の栄養塩が必要であり、バイオレメディエーションが自然浄化に委ねた場合と比較して、どの程度期間を短縮できるのかを推計することが可能である(試験によって数カ月以上にわたりデータを得ることは難しいが、このモデルで推計できる)。

さらに、このモデルにより油の分解に伴い、菌密度及が栄養塩濃度がバイオレメディエーションを行う前の状態に復旧するかどうかを推計でき、安全性を確認できる。

今後の課題としては、実験室レベルの試験からよりスケールアップして、実際の海浜でのフィールド試験を行って、シミュレーションモデルの精度を向上させることや、他の油種(本シミュレーションモデルではアラビアン・ライト原油のみを対象としている)にも適用できるよう試験データを収集することが必要である。

 

 

 

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