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5.5 試験結果

 

(1)原油の分解

図5-5-1に原油分解の経時変化を、図5-5-2に画分毎の原油の分解の経時変化を示した(0日で100%となっていないのは、原油添加時を100%としているためである)。三菱化学の栄養塩を加えた場合、原油の飽和画分に関しては、その80%以上が6週間後に分解された。その後2週間経過しても、分解はそれほど進まなかった。一方、Inipol EAP22は添加後6〜8週間経っても、飽和画分の分解は、30%以下のレベルであった。

芳香族画分に関しては、三菱化学の栄養塩を加えた場合、わずか(30%程度)の分解が起こったように見える。統計的に有意であるかは、この試験よりは結論できなかった(過去に類似の試験を行ってきたが、それらを平均すると、芳香族画分の20〜30%の分解が8週間で起こると結論できると考えられる)。これに対し、Inipol EAP22を加えた時の、芳香族画分の分解に関する効果は全く認められなかった。

レジン画分の分解を見ると、三菱化学の栄養塩を加えた場合、残存率が100%を超えていた。すなわち、レジン画分の濃度は、試験開始後増加した。これも過去の試験で既に観察されていた結果である。もともとレジン画分の原油中での含量は少ない。230℃で常圧蒸留カットした加熱風化原油の成分比は、飽和画分55%、芳香族画分33%、レジン画分・アルファルテン画分12%であった。この原油が微生物分解を受けると、飽和画分および芳香族画分より生じた分解中間体がある程度蓄積し、それがレジン画分として検出されると考えられる。すなわち、三菱化学の栄養塩添加後に見られたレジン画分の増加は、飽和画分および芳香族画分の分解の反映であると考えられる。

一方、Inipol EAP22添加によっては、このような急激なレジン画分の濃度の上昇は観察されなかった。この結果は、飽和画分および芳香族画分での低い分解率の結果と一致している。

加熱風化原油の成分比と画分分析による残留率から、三菱化学の栄養塩の場合の分解率は、約550%、Inipol EAP22の場合は、約13%と推計される。

 

(2)菌密度

海水中の菌数は、通常105CFU/mL程度である。今回も、栄養塩添加前の濃度はそのオーダーであった。栄養塩を加えた後、菌の濃度は上昇し、三菱化学の栄養塩の場合、3×106CFU/mL程度、Inipol EAP22添加の場合は、107CFU/mL以上の値になった(図5-5-3)。この結果より、三菱の栄養塩に比べ、Inipol EAP22の方がより良い栄養塩の供給剤であるか、あるいは、Inipol EAP22自身がC源となり、菌の増殖を促進している可能性が示唆された。上述したように、原油の分解率は三菱化学の栄養塩を加えた方が高かったので、Inipol EAP22がC源となっている可能性が高いと思われる。

一方、砂利表面の菌密度は三菱化学の栄養塩、Inipol EAP22とも107CFU/mL以上の値になった(図5-5-4)。

 

 

 

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