5. 海浜模擬試験
5.1 要約
バイオレメディエーションの効果や安全性を確認するため、平成7年度にはフラスコ試験を、平成8年度にはカラム試験を行い、順次スケールアップし平成9年度には海浜模擬実験装置を使用した試験を行った。
平成8年度に行ったカラム試験は海水を入れ替える排水型で実施したが、30日後の分解率は10%程度であった。そこで、海浜模擬試験は当初海水を入れ替えない循環型で行うこととした。しかし、予備的な海浜模擬試験結果から、干満によって海水を入れ替える排水型の方が海水を入れ替えない循環型よりも油の分解率が高いことや排水型の方がより実海浜に近いと考えられるため、排水型の試験に変更した。
また、これまでの海浜模擬試験結果(排水型)から、自然浄化(海水+原油)に比してバイオレメディエーション(海水+油+栄養塩)の効果があること、栄養塩の他に原油分解菌を併せて投入した場合、初期の間は微生物の増殖が活発になるが最終的には原油分解菌の投入効果は小さいことが明らかとなった。また、画分分析結果から、トータルの分解率(84日後)は、自然浄化で約0〜16%、栄養塩を添加した場合で約44%、栄養塩及び原油分解菌を添加した場合でも約44%と推計された。
そこで、本試験には2種類の栄養塩(三菱化学(株)製の緩効性栄養塩及びInipol EAP22)を使用し、施肥効果(油の分解度)及び安全性(栄養塩濃度、菌密度)を確認・比較することとした。三菱化学(株)製の緩効性栄養塩(窒素源としてスーパーIB、リン源としてリンスター30)はこれまでの海浜模擬試験で使用され、効果が確認されている栄養塩であり、Inipol EAP22はアラスカでのExxon Veldez号事故で適用された栄養塩である。
その結果、約2ヶ月後の三菱化学(株)製の栄養塩の油分解率は約55%、Inipol EAP22の油分解率は約13%であった。