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b. 成分分析

試験で得たサンプルの成分分析結果を図3-4-6、3-4-7に示す。図3-4-6は窒素源が高濃度の試験での試料の全TLC/FID析結果の平均値をプロットし、対数近似した曲線を併せて示したものである。図に明らかなように、もっとも急激な分解は飽和画分、芳香族画分共に試験初期に観察され、その後は緩やかな減少を示している。このことは、上に述べた菌密度の増減傾向および重量減少率による分解率経時変化傾向ともよく対応している。なお、7日目の試料分析値は、ばらつきが大きかったため、対数近似からは省いた。

画分毎の減少傾向は、芳香族画分に比して飽和画分が全体に高い分解率を示しており、30日経過後では風化原油ベースで、芳香族画分の分解率24%に対して飽和画分は50%以上が分解していた。

図3-4-7は試験で得た全TLC/FID分析結果の平均値を棒グラフで表示したもので、図3-4-7(上)は図3-4-6と同じく高窒素濃度条件のものである。低窒素濃度条件で得たデータを示した図3-4-7(下)に示されている通り、飽和画分および芳香族画分共に全期間を通じて20%を越えるような顕著な分解は見られずまた、データのばらつきもより大きかった。このことは、上に述べた菌密度の増減傾向データから考えても、低窒素濃度条件における最大到達菌密度が108CFU/mL未満であり、菌体として変換された原油重量が非常に少量であり、窒素分不足による増殖抑制が顕著に起こっていたことを示している。

 

c. 栄養塩濃度

それぞれの培地中のそれぞれの窒素濃度を表3-4-1、表3-4-2に示す。これらの窒素濃度は、原油をクロロホルム抽出した後の培地について測定したものである。分析に際しては10倍〜100倍の希釈試料について分析しているので分析時の誤差がかなり増幅されている可能性がある。

原油添加培地に植種し1時間振とうした後、培地中の油分をクロロフォルム抽出し、残りの水層中の窒素濃度を硝酸態、アンモニア態ならびに有機態窒素濃度を測定した結果を表3-4-1に示す。表に明らかなように、硝酸態、ならびにアンモニア態窒素の初期濃度は、それぞれほぼ設定通りの濃度であった(有機態窒素濃度としてキエルダール窒素の測定も実施したが、培地に100mM添加したpH緩衝剤であるHEPES中の窒素も同時に測定されるためバックグラウンド値が高くなり、意味のあるデータを得ることができなかったので表からは割愛した)。

同じ条件で準備した試料を1週間振とう培養した培地から同様にクロロホルムによって残留油分を抽出した後の水層中の窒素濃度を測定した結果を表3-4-2および図3-4-8に示す。これらの図および表に明らかなように、高窒素濃度条件試料において培養後培地中の残留窒素形態はその大半が添加した形態と同じ窒素として存在しており、その濃度はおよそ初期濃度の半分であった。ただし、尿素を添加した培地では平均60mg/Lの窒素がアンモニア態に変換

 

 

 

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