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されていた。一方、低窒素濃度条件では、全ての窒素源形態の培地中で硝酸態窒素が主要な残留窒素形態であり、その残留率は初期濃度に対して10%〜20%であった。

これらの結果から、本試験に用いた原油分解菌は硝化能を有してはいるがその活性はあまり高くないことが示唆されていると思われる。特に、添加窒素形態が硝酸態以外の高窒素濃度条件である培地において、硝酸態窒素の蓄積がほとんど見られなかったことから、原油分解菌が硝酸態以外の窒素源も直接利用する能力を有しているか、あるいは硝酸態窒素への酸化(硝化)速度が律速段階であった可能性の両者が想定される。なお、低窒素濃度条件では、窒素不足による生育抑制が生じていたことは明かである。培養後の尿素添加試料において恐らく大半の窒素がアンモニア態窒素として存在していたことは、本原油分解菌の系においてウレアーゼによるアンモニア化反応が速やかに進行したことを示唆している。

初期添加窒素と1週間培養後の窒素濃度の差が全て菌体として存在していたと仮定すると、平均残留窒素濃度は約60mg/Lであるから132mg-N/L-60mg-N/L=72mg-NLが菌体として固定されたことになり、一般的な菌体組成(C5H7N02)を用いれば、72mg-N/L×113/14mg-cells/mg-N=581mg-cells/Lが増加した菌体量(ただし死滅した菌体も含む)である。従って、菌体109cellsあたり1mgとの文献値を用いれば培地中の菌密度は581mg-cells/L×109cells/mg-cells×1/1,000L/mL=5.8×108cells/mLと推定され、一部の菌体は既に死滅していると考えられるので、この推定値は培養後の培地中菌密度実測値とはオーダー的には一致していると言うことができる。

 

 

 

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