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(2)試験結果

a. 残留油量

窒素源が高濃度の試験で得た結果を図3-4-1に示す。図に明らかなように、窒素源種による原油分解菌の増殖特性に顕著な差違は認められなかった。

従って、溶存酸素が常に十分あるような本試験条件では、窒素源種による影響はほとんど現れないと考えられる。また、図に明らかなように原油分解菌の増殖は培養開始直後2日間でほぼ最高密度(2×10S CFU/mL程度)に達し、その後はその密度を保ったが、30日後には最大到達密度の約半分程度の密度となった。

一方、菌密度計数と同時に培地中の残留油を溶媒抽出し秤量した結果(図3-4-2)を比較すると、培地中の残留油量も培養初期に急激に減少しその後は緩やかに減少する傾向を示した。また、図中には硝酸態および尿素態の場合の減少曲線を内挿して表示しているが、尿素の方が若干効果が高いと推察される。ただし、データ間のばらつきが大きく不確定な要素も大きい。

以上の比較から、本試験で用いた回分培養の系では、加熱風化原油の分解速度ならびに量は、系内の原油分解菌の増殖速度ならびに到達菌密度に比例して変化しており、基質である加熱風化原油の量に対して十分量の窒素・リンあるいは溶存酸素が維持されていても、それら以外の原因で定まるある最高菌密度以上には原油分解菌の増殖が進行せず、従って加熱風化原油の分解も進展しなかったものと推定される。また、油残留率の変化から見た窒素源種の違いによる効果も顕著ではないが、尿素が優れているようである。

窒素源濃度をより低く設定した試験で観測された菌密度計数結果を図3-4-3に示す。図に明らかなように、高窒素濃度の場合に比べて全体的に菌密度は低く、約1/3から1/4程度(2×108CFU/mL対5〜6×107CFU/mL)の到達密度であったが、両者の変化傾向はほぼ相似的であり、培養初期に急速な菌の増殖が生じその後は余り大きな変化はない。また、最大到達菌密度の出現時期が高濃度条件に比して若干遅れている傾向も見られるが、その差は顕著ではない。このことは、高濃度条件に比してその十分の一の窒素濃度でも明らかな施肥効果が現れたが、その効果の程度は同等ではなく、また、窒素源種による差がほとんど無いことを示している。

培養後の培地から抽出した残留油量については、データ間のばらつきが大きく明確な傾向は見られないが、培養初期に急激な分解が起こりその後は余り変化していないと推察される(図3-4-4)。また、特にアンモニア態窒素を用いた試験における油残留率が全般に高いが、その理由は不明である。また、最終原油分解率は、低濃度条件では高濃度条件に比して明らかに低く、窒素源を用いた試験の全データの平均値によれば、高窒素濃度条件下では30日間で油残留率が72%であったのに対し、低窒素濃度条件下では同期間を経た後でも89%の加熱風化原油が残留していた(図3-4-5)。

 

 

 

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