ったのに対し、1990年には逆にCustomblenの使用量が増えて、約1:4であった。
b. Exxon社の科学者による調査の結論
(a)栄養塩をまくことで、油分の生物分解率は3〜5倍に上がった。油の成分の中でも分子構造によって、分解率は異なるが、多環芳香族炭化水素を含むほぼすべての成分が分解されていた。1989年の9月、10月には汚染された海浜の微生物のうち、油分解微生物が占める割合が増加したが、1990年の夏には、油流出前の状態に戻っていた。つまり、生分解が従来の状態に戻った、すなわち油が分解されたということが言える。
また、残存油分の組成の変化を統計的に分析していったところ、バイオレメディエーションの効果が現れていることがわかった。さらに、ある浜ではガスクロで検出された炭化水素の60%、PAHsの45%が3カ月で生分解されていた。
(b)バイオレメディエーションによる海岸線の生物相や作業員への副作用はなかった。
US-EPAがラボと現地テストで毒性テストを行い、海空陸のいずれの生物相にも影響がないと判断した。アンモニアの濃縮で海洋生物への影響が出ることが心配されたが、地中深さ0.5mを計ったところ、1.9ppmを超えることはなかった(US-EPAによる短期の水質基準が10ppm)。栄養塩を扱う作業員を保護するための、空気の成分や医学テストによる監察の結果、適当な保護服と作業プロセスを踏めば、安全であるとわかった。
(c)生分解率に最も影響を与えるのは、窒素栄養塩の量であった。生分解率を左右する要素は、窒素濃度、沈殿物の油量、平時の油分解量、時間である。結果より、生物相に影響が出ない程度で栄養塩散布の頻度や量を増すと、生分解率を更に高めることができると推定される。
(d)浜辺の水面に散布した栄養塩は、海面下の油に効果的に到達した。
(e)今後のバイオレメディエーションの適用には、沈殿物や水中の窒素濃度と油分解率に深い関連性があることから、最適の効果を上げるための栄養塩の量や適用頻度を計るモニタリング技術が求められる。
c. 今後への展望
Exxon Valdez号事故のように、バイオレメディエーションが適したケースでは、海洋生物相に安全なレベル内での最高の窒素レベルを保つことで、生分解率を最高値に高められると言える。こういった場合、水中の窒素栄養塩濃度をパラメータとして使うと、簡単に計測でき、散布栄養塩の適切な量と散布頻度を決定できる。