1990年の状況は、春には冬の嵐などを含む自然の浄化作用で、海岸線の油は劇的に減少した。また、生態系も、自然にもとの姿に戻ってきていた。1989年の浄化と冬のラボ調査で、1990年のバイオレメディエーション適用が検討された。
1989年の事故直後に用いた、海岸線を高圧水洗浄する方法は、油濃縮物の除去が終了した1990年には、効果がないとされた。残存油のほとんどが地中に残り、水をまいても直接除去する事はできないためである。また、岩面を洗浄して油を海岸線に戻す方法は、環境に与える影響が大きかったことから、採用されなかった。
調査・検討の結果、表面上の油は1989年から比べてかなり減少していたため、地中の油に焦点が向けられ、再び、条件付きでバイオレメディエーションが行われることになった。1990年には、バイオレメディエーションを単独で大規模に適用したり、機械的浄化方法と組み合わせたりした。
a. 試験の概要(ジョイント・モニタリング(Exxon社、US-EPA、ADEC)、1990年5月末〜9月)
1990年の春には、冬の嵐や生分解等で自然による海岸線の浄化が進んだが、残存油が存在したため、バイオレメディエーションは続けられた。しかし、効果が明確な形で量的に示されないことが懸念された。そのため、Exxon社は、US-EPAとアラスカ環境保護庁(以下、ADEC)の協力で、モニタリング・プログラムを作り、海岸線3カ所のバイオレメディエーションが基準に沿っていること、また、バイオレメディエーションが環境を破壊せずに生分解を促進したことを証明しようとした。
Exxon社は、バイオレメディエーションの効果と安全性を確認するデータを集めた。目的は、?地中に栄養塩が届き、一定期間効果が持続するか、?栄養塩により炭化水素分解微生物の活動が促進されているか、?栄養塩の使用による微生物数の変化、?地中の残存油の量と成分の変化を知ることであった。
安全性のモニタリングには、栄養塩の沿海への有害性、algal生成の促進、微生物が生成した界面活性剤による油の機械的除去などの可能性を調べた。
3カ所の油汚染が広範囲な地域が選ばれた。
(a)KN-132は、Herring Bayの低エネルギーの海浜で、主に表面に油が残っていた。
(b)KN-211は、Knight Islandの東岸の高エネルギーの海浜で、表面下にのみ油が残っていた。
(c)KN-135は、Bay Of Islesの低エネルギーの海浜で、表面上、表面下ともに油が残っていた。
3カ所とも、1989年にバイオレメディエーションは受けておらず、1990年の時点では、他の地域よりも油汚染度は高かった。
ガイドラインに沿って、(a)と(c)には、Inipol EAP 22とCustomblenを、(b)には、Customblenのみを散布した。