2.2 我が国における成果
2.2.1 工業技術院四国工業技術実験所/生命工学工業技術研究所
(1)テーマ
生命工学工業技術研究所と四国工業技術実験所は共同で平成5年度より海洋に流出した石油を浄化する技術の開発に着手している。なお、対象は外洋での油事故である。
(2)方法・技術
石油を分解する働きをもつ海洋微生物を利用するもので、生分解性素材で微生物と栄養塩を一体化させ、微生物の増殖を助けて流出油を効率的に分解させようとするものである。
?マット
中に微生物と栄養塩を含む吸着油マットを開発するもので、マット用繊維は親油性をもたせ、かつ微生物の栄養になる機能をもたせる必要がある。微生物を生かすためには酸素、温度条件を考慮する必要がある。
繊維径 約0.1mm、マット厚みは1cm
?微生物
海洋性のキャンディダ属の酵母
?繊維
アルギン酸を原料とする繊維を考えており、油吸着性と微生物の生存性が両立するアルギン酸繊維の加工技術を探索する。
?吸着後の処理
吸着後回収して肥料にすることができる。
?スケジュール
イ. 期間 5年間
ロ. テストオイル 数種類試験する
ハ. 外洋での実テスト 実施するかどうかは未定
(3)要点
?微生物と栄養塩を生分解性素材で一体化して活用する研究は初めてである。
?油分解性微生物あるいは油分解性微生物と栄養塩を同時に散布する方法があるが十分でない。
?生命工学研究所(旧微生物工業研究所)は石油を分解する微生物の海洋スクリーニングで実績がある。
?四国工業技術実験所はアルギン酸(昆布などより取出す)の繊維化、シート化、異種材料(活性炭、微生物、酵素)を含む繊維の製造技術、その他食品分野、医療分野、音響振動板などへの応用研究を行っている。
?アルギン酸は糊剤、アイスクリーム増粘剤などに用いられるもので工業生産されており、微生物の栄養塩でありかつ分解性がある。