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かつて、行政組織に敵対する市民運動の数が多かった時代には、「環境教育」を健やかに行うことは、かえって困難でしたしかし、行政、市民、NGO、議会がパ―トナーシップを結び、お互いに協力しあいながら、社会を作っていく時代を、私たちの手で育てていけば、市民一人一人の貴重な新しい体験の機会はどんどん増えていきます。

そのような時に、費重な体験を積んだメンバーが、環境教育の目標である、「断固たる行動者」として育っていくと思います。

 

5-2 教育者のための環境教育研修モデルプログラム

平成10年1月10日〜3月15目にかけて、第2第4土曜及び日曜を使って全10回の「ここが知りたかった!教育者のための環境教育講座」を開催した。この事業は、我が国における環境教育の指導者養成において、これまでに類例のないモデルプログラムとして、(財)埼玉県生態系保護協会が実施したものである。

生態系の仕組みと環境問題の原因について正しく認識し、市民行動のあり方までを取り入れた環境教育指導者研修は、我が国では珍しい企画である。以下にその内容を紹介し、日本の環境教育指導者研修のあり方について捉えなおしてみる。

 

5-2-1 教育者向け環境教育の概説

私たちは今まで経済を優先させた社会をつくってきました。その結果、品物があふれる快適な生活を送ることができました。しかし、その半面、私たちは他人よりも多くの財産を求めるあまり、自己中心的になり、思いやりという、最も大切な心を失ってきてしまいました。このことは、犯罪が増加し、子どもたちが多くの問題を起こす事態も招いています。

しかもそれだけではありません。大量に生産をしたことにより、将来の子どもたちも使う予定の、生物資源や地下資源といった、人類の生存基盤である自然生態系を破壊しているのです。自然生態系が崩壊することの恐ろしさを知らず、もっといい生活をと追い求めた結果滅びていった、かつての文明と同じ道を、私たちは今たどりつつあります。

この問題を解決するために、私たちには今、ライフスタイルの転換が求められています。これには、環境教育を進めることが大変重要になってきます。世界では1972年の「国連人間環境会議」以来、環境教育の重要性を国際的な共通認識とし、自然生態系と社会、政治、経済、文化等のつながりを循環という視点から見つめ直し、いかにして理想的なライフスタイルと社会的行動のできる市民を育成するかが求められているところとなっています。

我が国においても、10年ほど前から、遅ればせながら環境教育を推進することの重要性が学校現場や有識者の間で叫ばれはじめました。しかしながら、今のところ日本で環境教育と呼ばれるものの多くは、個々の環境問題を単一的現象として一方通行の知識だけを流すだけの場合が多く、その背景にある社会的原因を的確に捉えていません。これでは、環境教育の目的を違成すること

 

 

 

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