日本財団 図書館


環境教育を進めると行っても、自然に対する考え方ができていない大人たちでは、子どもたちを導くことはできません。ですから、今育つ子どもたちへの教育と同じくらい、指導者養成はたいへん重要な役割をもっています。

教員養成大学のカリキュラムの中に、環境教育を系統的に取り入れることはもちろんのこと、行政の担当者、現役学校教員、そして子どもたちを育てる私たち大人世代すべてを対象として、さまざまなチャンネルを使って、環境教育の指導者養成を行っていくことが重要です。

 

5-1-4 環境教育は知識よりも行動へ向けて

(1) 知識を知っていても行動しない日本人

酸性雨の問題、地球温暖化、熱帯雨林の壊滅的な破壊…。地球規模で起こるさまざまな問題について、日本人の知識水準は高いと言われています。

しかし一方で、日本の自然保護は進んでいるでしょうか?依然として世界で森林を破壊し続ける日本の企業。世界の深刻な社会問題や環境破壊の現場に、ボランティアとして飛び込んでいく日本人の少なさ。どれをとっても、環境問題に対応する「行動」が、できていないことがわかります。

 

(2) 環境教育の6つの目標段階

1975年に、1977年のトビリシ会議の準備会議として開かれた国連の国際環境教育会議で、ベオグラード憲章が採択されましたcそこには、環境教育は以下の6つの目標段階を踏むべきであると名言されています。

 

1) 関心:すべての環境問題に関心をもてること。そして人類の引き起こしている現代の環境問題について、事態の緊急性を実感できる感受性をもつこと。

2) 知識:現代の環境問題について正しく認識すること。

3) 態度:環境問題に対して毅然とした態度で生きていけること。

4) 技能:問題を解決するための手段を知り、その手法を実践できる能力があること。

5) 評価能力:社会で起こる問題について、生態学的、美的、政治的、経済的、法的、その

他さまざまな基準での価値判断能力があること。

6) 参加:環境問題に対応するため、積極的に行動を起こし、社会参加を行うこと。

 

(3)環境教育の社会性と体験学習

環境教育を進めていくと、社会参加のための体験教育が大切であることに気づきます。しかしここで気をつけなくてはならないのは、環境教育は「自然保護運動」ではないことです。ベオグラード憲章でも述べられているように、指導者の思想を上意下達式に押しつけて強制することは、「環境教育」では勧められていません。私たちが大切なことに気づいたプロセスには、「重要な体験」があります。個人の価値観を揺り動かし、成長させていくような体験をいかに効率的に行わせ、「自発的に環境行動を選び、自分の中から湧き出てくるエネルギーで参加・行動する」人材の開発が、環境教育の重要なポイントです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION