4)皆に十分に
このビジョンでは、世界は別の道を選択した。1990年代に人々は、環境破壊は主に世界の豊かな国々で追求された、加速度的に資源集約的になる生活様式のせいだ、という確信を強めた。さらなる経済成長という従来の解決法では、環境問題が提起する難問に対処することができないことが明らかになった。その代わりに、小規模で生態学的に健全な技術の開発と、「代替エネルギー」源を利用する安全で効率的な方法への投資に、関心が集中した。
産業政策はゆっくりと、しかし着実に「グリーン(環境によいこと)」重視の方向に変わっていった。広範な学校教育と成人教育、および情報プログラムの結果、過半数の人々は環境を救うために必要な変化を受け入れるようになった。
発展途上国は、先進諸国が環境を救うために本当に有効なことをしているのがわかった時点で、自国の排出を制限することに同意した。発展途上国への大規模な技術移転によって、これらの国々の生活水準は徐々に向上した。地球の人口は約100億人で安定しているが、世界の生態系への圧迫はかなりのものである。それでも、部分的計画経済や、小規模で環境的に健全な技術への投資、および遺伝子工学によってもたらされた機会の慎重な利用のおかげで、環境破壊を受容できる限界内に留めることが可能であることがわかった。
2050年、「皆に十分に」のビジョンに基づいた国では、いろいろな問題はあっても、まあまあ耐えられる生活ができている。物質的な生活水準はこれまでペースでは向上しないが、人々の基本的なニーズは十分満たされている。そして、それは長期にわたる生存の見通しを与える社会、すなわち将来の世代が使うべき資源をすべて消費することのない社会である。
(9)よりよい未来のために、自然から学ぶ
密接に関連した概念を見分けるのは、時として難しいことがある。信頼度のまちまちな主張に基づいた推測や予言や傾向予想が、絶対的真実の地位に持ち上げられ、他方、自然の法則はほとんど交渉次第のように見える。
洋服や車の流行は人間の気まぐれ次第で時間とともに変化する、という事実は自明のことである。しかし不安の高まる中で今また、我々の経済システムも同様に崩壊や変化の犠牲になりやすいという確証が我々に示されている。東洋では老朽化した計画経済が市場原理に取って代わられたが、西洋ではその市場原理に対して懐疑の念が高まっている。
(10)ジャングルの法則
こうした市場原理は、ジャングルの自然の法則の経済版と言えるかもしれない。支配権をめぐる闘争の中で、強者は勝ち弱者は負ける。これは人口曲線の図式化にあたっての基本である。個体の数は時間と共に上下する。
一定の種の人口曲線は、時として急激な変化を示すことがあり、その変化はある程度規則的に繰