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リオの世界環境会議やアジェンダ21といった地球環境についての警告は、突如として人類が自ら変わろうとしていることを示すものには程遠く、むしろ人類が変わらないことを示している。地球の人口が比較的限られていたうちは、そして我々が天然資源やエネルギーを今のようなヒステリックなペースで消費し始めるまでは、地球全体としては物事はまあまあ平穏に収まっていた。その後、「万物不滅の法則(すべての事物およびエネルギーにあてはまる熱力学の第一法則)」が発見された。それと同じくらい絶対的な真実である「万物は拡散する(やはりすべての事物およびエネルギーにあてはまる熱力学の第二法則)」という法則に頼って、その結果いずれにせよ何も消滅してはいない、ということを忘れたとしても、それはそれで必然だったのかもしれない。人類は、煙突を作ることによって物質を拡散する自然の能力を増進させ、それからそれらをどんどん高くして、汚染物質が最終的に地表に落ちる範囲をさらに広げた。同じ様に人類は海峡、湖および河川を通じて汚染物質を拡散させることによって、海洋を食い物にした。しかし、最近数年間、私達は自分たちの活動の結果に気付き始め、現実に思い知らされた。「万物は不滅」、これが事実である。私達の汚染を拡散させようとするのは、全くナンセンスである。今や汚染物質は非常に広範囲に分布しているため、私達が汚染を巻き散らして得られたものは世界の隅々にまで影響を及ぼす廃棄物のやりとりだけである。そうではなく、人類は我々の惑星の資源は有限であるという事実に適応することを学ばねばならない。

 

(2)長期的に持続可能な開発

最初はブルントラント委員会が、次にはリオの世界会議が、この視点を表現するのに「長期的に持続可能な開発」というフレーズを使った。長期的に持続可能な開発の基礎となりうる生活様式をあみ出す必要というのは、おそらく人類がこれまで直面した中でも最大の困難であろう。それは一つの価値観が地球上のあらゆる文化の中に突然植え込まれなければならないという問題である。この価値観はおそらく直接適用できるものではなく文化的な考え方の中に統合される性質のもので、また我々が生命の尊厳を尊重するのと同じ厳粛さを与えられるべきもの、つまり景気不景気、政治的な権力バランスの変化などという要素には影響されないものでなければならない。

我々の文化では、人間の命に対する尊重は何百年、いや何千年をかけて自明の根本的な原理として確立してきた。我々が今新しい地球的なコンセンサスを、しかも大急ぎで確立する必要に迫られているという事実は、考えるとめまいのするようなことである。我々はおそらく、コンセンサスの必要というまさしくこのことを、世界中の意識を高める土台として使えると思われるが、おそらくはそれを共同のアジェンダ21という形で、ということなのだろうか。我々が考え方を一新し新しい万能薬を作るためには、次のようなことに重点を絞るとよい。

・残された資源の尊重

・人類が生きて行くことができるバランスを作り上げた生態系の価値

・自然の保護および保全

・異なったテクノロジーの共存の可能性

これはまた、根本的な方法で根本的な決断を下すのにも役立つ。

 

 

 

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